2017年02月16日

ワトソン氏、和モガ氏の緩いピースを詰める? 追加3 ryobu-0123氏ブログからも引用

和モガ氏の証明には1)FLSの実験計画上の位置づけが曖昧、2)若山氏の変心が主観的すぎる、と言う点で、受け入れなかった。

有志の会ブログのコメ欄だけで一人活躍中のワトソン氏が1)を詰める見解に達したようだ。
なお、ぼくには詳しくわからないのだが、キメラ実験マウスとSTAP幹細胞マウスが異なるとしている。

小保方氏の手記に基づくぼくの見解では、in vivoではキメラマウス樹立に成功しているが、in vitroのSTAP「幹」細胞(和モガ氏はES細胞共培養とする)が成功しているのか全くわからないと言う立場である。言い換えると和モガ氏に反して、FLSはES細胞であっても、真正STAP「幹」細胞であってもどちらでもいいという立場である。

ワトソン氏の投稿をコピペする:
http://blog.livedoor.jp/obokata_file-stap/archives/1062914167.html#comments
419. J・ワトソン 2017年02月15日 21:16
もう一度言いますよ。

1)論文の実験
Article論文の実験のために用意されたマウスは、CAG-GFP挿入B6マウスとCAG-GFP挿入129マウスを掛け合わせたF1です。若山氏はそのようなマウスを用意して小保方氏に渡したと明言しているのです。

2)「光る精子」の実験
一方、若山氏が行った「光る精子」の実験のために用意されたマウスは、Acr/CAG-GFP共挿入B6マウスと野生型129マウスを掛け合わせたF1です。「光る精子」の実験を行うためには、最初からこれらのマウスを用意しておかなければならない。若山氏がそれを用意したのです。ですから、論文とは全く別の実験が行われたということです。

420. J・ワトソン 2017年02月15日 21:32
桂調査委の解析に回されたサンプルFLSは、この2)「光る精子」の実験に用いられたサンプルであった可能性が高いでしょう。おそらく、若山研には1)の論文のサンプルも残っていたはずです。しかし、1)はどこかに持ち去られてしまった。隠されてしまったのです。そして、2)だけが桂調査委の解析に回されたのです。

なぜか?

2)のサンプルには、それと全く同じ系統のES細胞が存在したからです。それらを解析すれば、STAP幹細胞=ES細胞という結論を偽装することが可能だからです。おそらく、1)のサンプルと全く同じ系統のES細胞などは過去に作られていなかったのでしょう。だから、隠したのです。

仮説ですよ。
421. J・ワトソン 2017年02月16日 06:40
ここで言う「全く同じ系統」とは、単にB6 129などのマウスのタイプとか、あるいはCAG-GFPやAcr-GFPなどのトランスジーンのタイプとか、が一致していればいいだけではなく、同一コロニーからのマウスで作られたSTAP細胞とES細胞が存在するサンプルである、という必要があった、ということでしょう。


追加:

ワトソン氏自身は、ねつ造はない説だそうなので、和モガ説を補強することになる。

422. J・ワトソン 2017年02月17日 07:43
論文の実験について以下の3つの説が提唱されています。

@小保方捏造説(すり替えたのは小保方氏)
1)若山氏が小保方氏に渡したドナーマウス:
  CAG-GFP 129マウスとCAG-GFP B6マウスを掛け合わせたF1マウス
2)小保方氏が若山氏に渡したSTAP細胞:
  129 x Acr/CAG-GFP B6細胞(FLS=FES1)
3)若山氏が樹立したSTAP幹細胞:
  129 x Acr/CAG-GFP B6細胞(FLS=FES1)
4)若山氏が桂調査委に渡したSTAP幹細胞:
  129 x Acr/CAG-GFP B6細胞(FLS=FES1)

A若山捏造説(すり替えたのは若山氏)
1)CAG-GFP 129マウスとCAG-GFP B6マウスを掛け合わせたF1
2)CAG-GFP? 129 x CAG-GFP? B6細胞
3)129 x Acr/CAG-GFP B6細胞(FLS=FES1)
4)129 x Acr/CAG-GFP B6細胞(FLS=FES1)

B実験においてすり替えはなかった説(私の説)
1)CAG-GFP 129マウスとCAG-GFP B6マウスを掛け合わせたF1
2)CAG-GFP? 129 x CAG-GFP? B6細胞
3)CAG-GFP? 129 x CAG-GFP? B6細胞
4)129 x Acr/CAG-GFP B6細胞(FLS not = FES1)

(注)「?」としたのはB6か129かどちらにGFPが入っていたのかわからないからです。論文の記載では、使われたマウスは、CAG-GFP B6純系やCAG-GFP B6 x 129(これだとFLSとは親マウスのオスメスが逆?)となっているようです。桂調査委によると、若山氏は、論文の記載は「間違い」だと言っているそうですが、もし正しいとすると、そもそもこれはFLSではあり得ない?
423. J・ワトソン 2017年02月17日 08:05
STAP幹細胞を用いた「光る精子」の実験は以下のように行われたはずです。

1)若山氏が小保方氏に渡したドナーマウス:
  野生型129マウスとCAG-GFP B6マウスを掛け合わせたF1マウス
2)小保方氏が若山氏に渡したSTAP細胞:
  129 x Acr/CAG-GFP B6細胞
3)若山氏が樹立したSTAP幹細胞:
  129 x Acr/CAG-GFP B6細胞(これが、実は、FLSではないか?)
4)若山氏が桂調査委に渡したSTAP幹細胞:
  129 x Acr/CAG-GFP B6細胞(これが、実は、FLSではないか?)


424. J・ワトソン 2017年02月17日 08:09
訂正
「423. J・ワトソン」
>1)若山氏が小保方氏に渡したドナーマウス:
>  野生型129マウスとCAG-GFP B6マウスを掛け合わせたF1マウス



>1)若山氏が小保方氏に渡したドナーマウス:
>  野生型129マウスとAcr/CAG-GFP B6マウスを掛け合わせたF1マウス

429. J・ワトソン 2017年02月18日 16:52
それでは、若山捏造説の立場に立てばどうなるか?

「光る精子」の実験は以下のように行われたはずです。

1)若山氏が小保方氏に渡したドナーマウス:
  野生型129マウスとAcr/CAG-GFP B6マウスを掛け合わせたF1マウス
2)小保方氏が若山氏に渡したSTAP細胞:
  129 x Acr/CAG-GFP B6細胞
3)若山氏が樹立したSTAP幹細胞:
  129 x Acr/CAG-GFP B6細胞

STAP細胞まではできていたけれども、STAP幹細胞ができないために、この3)のところでES細胞にすり替えたということになります。若山氏はマウスの系統について熟知しており、Acr-GFPマウスを用いた「光る精子」の実験を計画した張本人ですから、Acr-GFP入りのES細胞で捏造するのは当たり前のことです。
430. J・ワトソン 2017年02月18日 16:54
一方、「論文の実験」はどうでしょうか?

1)若山氏が小保方氏に渡したドナーマウス:
  CAG-GFP 129マウスとCAG-GFP B6マウスを掛け合わせたF1マウス
2)小保方氏が若山氏に渡したSTAP細胞:
  CAG-GFP? 129 x CAG-GFP? B6細胞
3)若山氏が樹立したSTAP幹細胞:
  129 x Acr/CAG-GFP B6細胞

やはり、この3)のところで若山氏がES細胞にすり替えたことになりますが、ここでES細胞を用いて捏造しようとする時に、マウスの系統について熟知している若山氏が、果たして Acr-GFP入りのES細胞を用いるなどという馬鹿げたことをするでしょうか?

ここで1)2)と明らかに異なる系統の細胞を使ったら、すぐバレてしまうことに若山氏が気づかないはずはないのです。ですから、若山氏が捏造したとすれば、必ず1)2)と同じ系統のマウスを選んだはずです。ですから、私は若山捏造説はおよそありそうもない説だと思います。
431. J・ワトソン 2017年02月18日 17:03
まとめてみます。

STAP幹細胞に関しては、少なくとも2種類の実験が計画され実行されたことが間違いありません。

1)Article論文の実験
2)「光る精子」の実験

もし、小保方氏が捏造犯だとすると、2)の実験にAcr-GFP入りES細胞を使ったことに合理性がない。もし、若山氏が捏造犯だとすると、1)の実験にAcr-GFP入りES細胞を使ったことに合理性がない。

したがって、二人とも捏造はしていない、という結論になります。


追加2/18
425. J・ワトソン 2017年02月18日 07:41
「あの日」p208には次のように書かれております。
**
6月の終わりの検証実験参加の打ち合わせの帰り道に、STAP幹細胞が間違いなく若山研にいたマウスに由来しており、そのマウスがアクロシンGFPマウスであることがわかったと私は連絡を受けた。連絡をくださった方に「アクロシンGFPマウスはどんなマウスなんですか?」と伺うと、「精子がGFPで光るという性質を持っている」と教えてくれた。
**

これによると、小保方さんは、Acr-GFPマウスについても「光る精子」の実験についても何も知らなかったことになります。

小保方捏造説によれば、「論文の実験」は次のように実行されたはずです。

1)若山氏が小保方氏に渡したドナーマウス:
  CAG-GFP 129マウスとCAG-GFP B6マウスを掛け合わせたF1マウス
2)小保方氏が若山氏に渡したSTAP細胞:
  129 x Acr/CAG-GFP B6細胞(FLS=FES1)

これはどうでしょうか?この実験では、キメラができればそれでいいのですから、ES細胞ならなんでもよかったとは言えます。ですから、たまたま何も知らずに、若山研に保存してあったFES1を見つけてそれを使ったのだ、と考えることも不可能ではありません。しかし、なんでわざわざ7年前のFES1なの?とは思いますが・・
426. J・ワトソン 2017年02月18日 07:47
一方、「光る精子」の実験は次のように行われたはずです。こちらはかなり奇妙です。

1)若山氏が小保方氏に渡したドナーマウス:
  野生型129マウスとCAG-GFP B6マウスを掛け合わせたF1マウス
2)小保方氏が若山氏に渡したSTAP細胞:
  129 x Acr/CAG-GFP B6細胞

小保方捏造説によれば、当然のことですが、この2)の細胞は、STAP細胞ではなく、ES細胞だったことになります。この実験において、若山氏は「光る精子」を用いた「顕微授精」の実験を行っているのです。ジャームライントランスミッションの観察のために。ですから、キメラができているのですね。

しかし、どうなんでしょうか?小保方氏が言うには、自分は使われるマウスの系統については何も知らなかったのであり、ただ若山氏から渡されたマウスでSTAP細胞を作って若山氏に渡していただけだと。それが真実だとすると、Acr-GFP入りのドナーマウスを渡されたとは知らなかったのに、Acr-GFP入りのES細胞で捏造したということになります。実に不自然ですね。
427. J・ワトソン 2017年02月18日 07:55
>Acr-GFP入りのドナーマウスを渡されたとは知らなかったのに、Acr-GFP入りのES細胞で捏造したということになります。

偶然でしょうか? それとも、小保方氏が「あの日」で嘘を書いているのでしょうか? もちろん、私は違うと思います。

428. J・ワトソン 2017年02月18日 08:46
また間違えました。訂正。しょうがないですねえ、もう。

>426. J・ワトソン
>1)若山氏が小保方氏に渡したドナーマウス:
>  野生型129マウスとCAG-GFP B6マウスを掛け合わせたF1マウス

>1)若山氏が小保方氏に渡したドナーマウス:
>  野生型129マウスとAcr/CAG-GFP B6マウスを掛け合わせたF1マウス

429. J・ワトソン 2017年02月18日 16:52
それでは、若山捏造説の立場に立てばどうなるか?

「光る精子」の実験は以下のように行われたはずです。

1)若山氏が小保方氏に渡したドナーマウス:
  野生型129マウスとAcr/CAG-GFP B6マウスを掛け合わせたF1マウス
2)小保方氏が若山氏に渡したSTAP細胞:
  129 x Acr/CAG-GFP B6細胞
3)若山氏が樹立したSTAP幹細胞:
  129 x Acr/CAG-GFP B6細胞

STAP細胞まではできていたけれども、STAP幹細胞ができないために、この3)のところでES細胞にすり替えたということになります。若山氏はマウスの系統について熟知しており、Acr-GFPマウスを用いた「光る精子」の実験を計画した張本人ですから、Acr-GFP入りのES細胞で捏造するのは当たり前のことです。
430. J・ワトソン 2017年02月18日 16:54
一方、「論文の実験」はどうでしょうか?

1)若山氏が小保方氏に渡したドナーマウス:
  CAG-GFP 129マウスとCAG-GFP B6マウスを掛け合わせたF1マウス
2)小保方氏が若山氏に渡したSTAP細胞:
  CAG-GFP? 129 x CAG-GFP? B6細胞
3)若山氏が樹立したSTAP幹細胞:
  129 x Acr/CAG-GFP B6細胞

やはり、この3)のところで若山氏がES細胞にすり替えたことになりますが、ここでES細胞を用いて捏造しようとする時に、マウスの系統について熟知している若山氏が、果たして Acr-GFP入りのES細胞を用いるなどという馬鹿げたことをするでしょうか?

ここで1)2)と明らかに異なる系統の細胞を使ったら、すぐバレてしまうことに若山氏が気づかないはずはないのです。ですから、若山氏が捏造したとすれば、必ず1)2)と同じ系統のマウスを選んだはずです。ですから、私は若山捏造説はおよそありそうもない説だと思います。
431. J・ワトソン 2017年02月18日 17:03
まとめてみます。

STAP幹細胞に関しては、少なくとも2種類の実験が計画され実行されたことが間違いありません。

1)Article論文の実験
2)「光る精子」の実験

もし、小保方氏が捏造犯だとすると、2)の実験にAcr-GFP入りES細胞を使ったことに合理性がない。もし、若山氏が捏造犯だとすると、1)の実験にAcr-GFP入りES細胞を使ったことに合理性がない。

したがって、二人とも捏造はしていない、という結論になります。


追加2/20
436. J・ワトソン 2017年02月20日 07:39
というわけで、「433. J・ワトソン」も書き直し。

論文の実験は次のよう行われた。

1)若山氏が小保方氏に渡したドナーマウス:
  CAG-GFP B6マウスと129マウスを掛け合わせたF1マウス
2)小保方氏が若山氏に渡したSTAP細胞:
  CAG-GFP B6 x 129 細胞
3)若山氏が樹立したSTAP幹細胞:
  CAG-GFP B6 x 129 細胞

すなわち、STAP細胞もSTAP幹細胞もできていた!

しかし、若山氏が・・

4)若山氏が桂調査委に渡したSTAP幹細胞:
  129 x Acr/CAG-GFP B6細胞(FLS not = FES1)

偽の細胞を桂調査委の解析に回すという偽装工作を行った!!!

という可能性が高い。


追加 2/19
437. 閲覧者 2017年02月20日 08:12
ワトソンさん、お願いです。

129CAG-GFP(ホモ)xB6CAG-GFP(ホモ)<僕のマウス>を小保方さんに渡した、と記者会見で証言したのは若山さんだったというところから、もう一度今の結論<若山氏が桂調査委に渡したSTAP幹細胞:129 x Acr/CAG-GFP B6細(FLS not = FES1)>に至る筋道を整理していただけませんか。
438. J・ワトソン 2017年02月20日 13:30
437. 閲覧者さん
>129CAG-GFP(ホモ)xB6CAG-GFP(ホモ)<僕のマウス>を小保方さんに渡した、と記者会見で証言したのは若山さんだったというところ

ここは本当のところがよくわからないのですが、少なくともAcr-GFP入りではなかったはずです。Article論文の内容から言って、Acr-GFP入りマウスを渡す意味がありませんから。論文にももちろんAcr-GFP入りなどとは書かれていません。ですから、若山氏がその「つもり」だったというのは、嘘ではなさそうです。

しかし、実際に渡したマウスは、GFP入りB6 x GFPなし129だったようなのです。論文の記載もそのようです(ここがよくわかりません)。しかし、その点は今回の私の結論には関係しませんので、とにかく、論文の実験において若山氏が小保方氏に渡したマウスはAcr-GFP入りマウスではなかったということだけ押さえておいてください。
439. J・ワトソン 2017年02月20日 13:37
>もう一度今の結論<若山氏が桂調査委に渡したSTAP幹細胞:129 x Acr/CAG-GFP B6細(FLS not = FES1)>に至る筋道を整理していただけませんか。

では、次の段階ですが、小保方氏は、渡されたマウス(CAG-GFP入りB6 x 129マウス)のリンパ球からSTAP細胞を作製した。その細胞を若山氏に渡した・・

「それは違う!若山が受け取った細胞は実はAcr-GFP入りだったのだ。小保方がSTAP細胞だと偽ってFES1というES細胞を渡したのだ!」というのが、小保方捏造説ですね。

しかし、これには証拠がありません。そもそも、そのSTAP細胞は残っていませんから。調べようがないわけです。
440. J・ワトソン 2017年02月20日 14:07
それはそれとして、次の段階にいきましょう。若山氏は小保方氏から受け取った細胞を培養してSTAP幹細胞を樹立し、「その細胞」を保存しておいた(これを「STAP幹細胞@」とします)。

そして、『その細胞』(これをSTAP幹細胞Aとします)を若山氏のお知り合いの「第三者」?あるいは、桂調査委が調べたところ、「これは!なんと!Acr-GFPが入っているではないか!小保方がすり替えたのだ!捏造だ!決まりだ!」というわけです。

しかし、この「STAP幹細胞@」と「STAP幹細胞A」は同一の細胞だという証拠がありません。若山氏がそう言っているだけです。

私はこの「STAP幹細胞@」が論文の記載通りに作製されたCAG-GFP B6 x 129 由来のSTAP幹細胞であり、「STAP幹細胞A」がAcr-GFP入りのFLS STAP幹細胞ではないか、つまり別物、と考えているのです。
441. J・ワトソン 2017年02月20日 14:21
>440. J・ワトソン
>しかし、この「STAP幹細胞@」と「STAP幹細胞A」は同一の細胞だという証拠がありません。若山氏がそう言っているだけです。

そこで、「GFP B6 x 129マウス由来のSTAP細胞はできていた。しかし、STAP幹細胞@はできなかったのだ。だから、若山がESで捏造したのだ。FES1にすり替えたのは、実は若山自身だったのだ!」と主張する小保方擁護派が現れた。若山捏造説です。私はこれも違うと考えております。
442. J・ワトソン 2017年02月20日 15:55
440. J・ワトソン
>私はこの「STAP幹細胞@」が論文の記載通りに作製されたCAG-GFP B6 x 129 由来のSTAP幹細胞であり、「STAP幹細胞A」がAcr-GFP入りのFLS STAP幹細胞ではないか、つまり別物、と考えているのです。

付け加えますと、別物であると同時に両方の実験において、STAP細胞もSTAP幹細胞も両方ともできていたと考えております。もちろん、私のこの説にも、直接的な物的証拠はありません。しかし、以下に示す根拠によって、状況的には可能性が高いと判断できると考えたわけです。

1)「あの日」の記載等から、若山研においては、Article論文の実験とは別に、Acr-GFP入りマウスを用いた「光る精子」のSTAP実験が行われていたことは確実であること。
2)捏造説に立つならば、「論文の実験」も「光る精子の実験」も、どちらも捏造でなければならないこと(片方だけの捏造では、STAP細胞もSTAP幹細胞もどちらも少なくとも一度はできていることになってしまいます)。
3)若山氏が造説したのなら、「論文の実験」において、Acr-GFP入りES細胞を使うとは考えられないこと。若山氏は両方の実験におけるマウスの系統を熟知していたので、系統の違うES細胞で捏造するはずがない。
4)「あの日」によれば、小保方氏はAcr-GFPのことを全く知らなかった。にもかかわらず、小保方氏は「光る精子の実験」において、偶然にもAcr-GFP入りのES細胞を選んで都合よく捏造できたことになりますが、そのような偶然はありそうもないこと。
443. J・ワトソン 2017年02月20日 16:11
上記4)について追加です。

「光る精子の実験」においては、若山氏が「顕微授精」を行って精子が光るところを実際に観察しているのです。したがって、これは絶対にAcr-GFP入りES細胞で捏造しないと、そこでバレてしまうのです。

そのことを小保方氏が前もって知っていてAcr-GFP入りES細胞を用意したとは考えられない。それなのに実験は成功しているのですから、小保方氏は偶然にもそのようなES細胞を選んで捏造したということになりますが、そんなことがあり得るか?という話です。
444. J・ワトソン 2017年02月20日 16:30
以上の考察から、私は、小保方捏造説、若山捏造説には合理性が乏しいと考えました。ですから、偽装が行われたのは、若山氏が桂調査委に「これが論文の実験によって樹立されたSTAP幹細胞です」といってサンプルを渡す段階だったのだろうと判断できると考えました。そのサンプルが実は「光る精子」の実験で樹立されたSTAP幹細胞のサンプル(FLS)だったと考えればすべて辻褄が合うのではないでしょうか。



ryobu-0123氏は有志の会だったと思うがゾンビ氏のブログのSTAP細胞事件に関する部分を引用して、ES細胞説なら小保方氏ではなく(だいたいその場合、小保方氏は時空を随意に移動できるくらい超能力が必要だと思うんだが)、若山氏説を紹介している。

ぼくは、この桂報告書の話になると、たとえば昨日の衆院総務委員会の議事を聞いている時のように頭がぼうっとなって途中で気を失いそうになる。なんか昨日は、民進党議員の方が、外交に関するNスペの取材について外務審議官を問い詰めていたのだが、そのときは、何の話をしているのかわからなかった(あとで朝日で確認した)。そもそもマウスの遺伝的背景を否定することによる非存在の証明という「考え」が怪しい。この前提となるマウスという「考え」は「ぼくのマウスと違う」発言からだだらと由来したものである。これはねつ造説がアドホックに形を変え続けたその一部でしかないということだ。

みなさん、がんばっていただきたい。

以下引用:
Stap事件 ― 理解できない最大の謎?教えてください!若山先生 B
若山先生!下記調査結果に何故反論しないのですか?
◎ 若山氏独自で作製したSTAP細胞からSTAP幹細胞を樹立したが、それらも全てES細胞由来である。
STAP幹細胞(FLS-T1、T2)≒ ES細胞(129B6F1ES1)
http://ryobu.hatenablog.com/entry/2017/02/17/013921
chayakoban氏のブログ「感染研村山庁舎BSL4施設の稼働中止と移転を求める市民連絡会」の「雑感雑記(10)STAP細胞の謎(2016年6月13日)」に、鋭い指摘が整理されている。http://katakuri.blog.jp/archives/1038796763.html
・・・・・
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下記❶〜❻が成り立てば、ES細胞混入犯は小保方氏ではなく若山氏になる。

❶桂調査報告書および若山氏と小保方氏の証言から、若山氏がSTAP細胞作製およびSTAP幹細胞(FLS-T1,T2)の樹立に成功(2013年2月22日)したことは確実である。
❷ES細胞(129B6F1ES1)は一年前(2012年4月19日)に作成された。
❸桂調査報告書は、STAP幹細胞(FLS-T1,T2)がES細胞(129B6F1ES1)由来であると結論した。129B6F1ES1とFLS-T1,-T2は4種のゲノム特徴が一致しており、証明は強固である。
❹ES細胞混入は、STAP(幹)細胞作製のためのSTAP細胞培養中に、またはSTAP幹細胞(樹立)培養中に、成功の偶然性を排除して(必然性を予測して)行われた。
❺若山氏は本実験以前にSTAP幹細胞の樹立に成功していた。STAP幹細胞の樹立方法を知らない小保方氏(または他の研究員)が、STAP幹細胞(樹立)培養中にES細胞を混入しても成功の必然性は予測できない。
❻小保方氏(または他の研究員)がES細胞を入手し、STAP細胞培養中に成功の偶然性を排除してES細胞(129B6F1ES1)を混入することは以下の理由で否定できる。
本実験に使用されるマウスの系統(129B6)が分かっても(*)、GFPタイプ(CAG、Acr/CAG)を事前に把握するのは困難であり、129B6F1ES1細胞(CAG)を必然的に選択できない。
ES細胞の混入による(増殖能の低い)STAP細胞の増殖率や細胞塊の形成などの変異に若山氏が気付く可能性がある。
(*)若山氏は記者会見で「小保方さんはマウスについては全然詳しくなかった」と述べている。また、桂調査報告書は「小保方氏はSTAP細胞を作製する際に若山氏から渡されたマウスの遺伝的背景を把握していなかった」ことを指摘している。
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
桂調査報告が正しければ、chayakoban氏の6つの条件は成立すると思われる。
posted by Kose at 14:19| STAP

2017年02月15日

明日、衆院議員予算委員会総務委員会8:30〜(NHK予算審議を含むと予想)

BPOが先週末発表したのは驚いた。
衆院予算委総務委員会がいつなのかわからなかったが、今週だと言うことははっきりしていたからだ。
まあマスメディアはかたくなに沈黙を貫いているが、総務委員会で議員さんが取り上げるかどうか、一応注目すべきだろうと思う。
次のページに中継へのリンクが表示されるはずだ。暇なら総務委員会8:30〜を見てみてね。
ここで取り上げられたらBPO勧告の点数を上げたい。
別に、取り上げられなくても驚かないけど(自民党は了承済み)。

衆議院インターネット中継
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php
第193回国会(常会)が開かれています。
会期は平成29年1月20日から6月18日までです。
今日の審議中継
2月15日(水)
開会予定時刻 会議名
9:00 散会  財務金融委員会
10:00 散会  厚生労働委員会
10:00 散会  農林水産委員会
12:10 散会  経済産業委員会
13:00 散会  外務委員会

明日の中継予定
2月16日(木)の中継予定


開会予定時刻 会議名
13:00  本会議
8:30  総務委員会
posted by Kose at 17:24| STAP

【武田邦彦】小保方氏の人権侵害 メディアの弱いものイジメ その他反応



武田氏のYouTubeの場合、動画内で時系列情報を明示しないのでいつの話かよくわからないことが非常に多い。特に内容に変化があるわけではない。上記の通り2017年2月14日となっているがなんとも、今確かに話しているという内容がない。たとえば某タレントの話を挟むとか。ここらがジャーナリストじゃないところだと思う。

小保方さんを個人的に応援するブログ
http://blog.livedoor.jp/obokata2657/
という新しいブログが1月に開設された。一般人
の感覚が生きていていいと思う。

学とみこ氏のブログの更新が盛んだ。自制が効いているため、なぜか小保方擁護派から批判があるが、良識的だと思う。
学とみ子のブログ 病気と心を語り合いたいです。
なりすましの功罪 2年以上にわたり、つらい気持ちを持ち続けたことが伝わっていた。そして、ぶちまけたい衝動に激しく気持ちがゆすぶられるようであった。
http://blogs.yahoo.co.jp/solid_1069/14791043.html

このブログのなりすましコメント主は、まあ有志の会コメント欄でかつて暴れていたハンドル「えりさん」以外ではありえないと思う。

最近ツイッターでこの方がよく発信している。ブログも開いているようだが、おもに木星氏の記事をフォローする内容であった。



立場は差まであるが、いつもの方々以外に、若干広がりが出てきた兆候としてご紹介した。
posted by Kose at 08:19| STAP

2017年02月11日

NスペBPO勧告についての三木秀夫弁護士のFacebookメッセージ 追加

三木 秀夫
https://www.facebook.com/hideo.miki?fref=ts
12時間前 (2月11日7時付け)
2014年7月27日に放映されましたNHKスペシャルにおいて、小保方晴子氏に対して著しい人権侵害があったことから、BPOに対して人権侵害の申立をいたしておりましたが、本日、名誉毀損による人権侵害があったことを認定して頂き、NHKに対して再発防止などの勧告をしていただきました。さらに、取材方法についても放送倫理上の問題があったとする見解も示して頂きました。
人権侵害による勧告という最も厳しい決定を出して頂いたことについては、極めて正当なご判断を頂いたものと考えております。今後、NHKにおかれては、この決定を真摯に受け止めて頂き、再発防止等に取り組んで頂くことを期待します。
以下は本人のコメントです。
--------------------------------------
NHKスペシャルから私が受けた名誉毀損の人権侵害や放送倫理上の問題点などを正当に認定していただいたことをBPOに感謝しております。国を代表する放送機関であるNHKから人権侵害にあたる番組を放送され、このような申し立てが必要となったことは非常に残念なことでした。本NHKスペシャルの放送が私の人生に及ぼした影響は一生消えるものではありません。
2017年2月10日 小保方 晴子


三木 秀夫
https://www.facebook.com/hideo.miki?fref=ts
10時間前 ・ 大阪府大阪市 (2月11日7時付け)
NHKがBPO決定に反論している?まさか、事実なら呆れたものだ。
BPOは、NHKと民放各社からなる民放連が出資してできた団体で、国などからの放送規制がないように、自らが国や各社から独立した第三者の立場から意見を言う機関である。そこの勧告に従わないなら、国などからの規制に任せる話になりかねない。本気とは思いたくない。


三木 秀夫
2月13日 9:15
NHKがBPOから人権侵害を認定され、そのことの公表を命じられました。NHKは人ごとのようにニュースで流し、勧告を真摯に受け止めると言っただけで、あとは自己の正当性を長々と主張した。このことで、NHKは再び彼女への人権侵害を犯したと思わざるを得ない。真摯に受け止めると言ったのは、全く嘘であるとしか考えられない。

posted by Kose at 06:59| STAP

2017年02月10日

「ウィー・アー・ザ・チャンピオンズ」BPO勧告、勝ったがさほど喜べず

BPOの勧告は、強いて言えば単に「泥棒と誤認させる演出があった」から名誉毀損であり、人権侵害だという論理である。小保方サポーターにはそれほどグッドニュースだとは思われない。STAP細胞が何であろうと「泥棒」という演出が人権侵害だという、科学外のアプローチからは最善の手法であろう。

さほど喜べないので、この日のために制作しておいた「ウィー・アー・ザ・チャンピオンズ」は、フォトショップによる色鉛筆画と最近話題になった線画に着色するAIの画像で作った動画で少し祝杯をあげるにとどめる。

posted by Kose at 20:37| STAP

【BPO】「STAP細胞報道に対する申立て」に関する委員会決定(放送概要画像および委員)

巻末の放送概要は表形式なのでJPEG画像で掲載する。600pxに縮小。原寸はPDFでどうぞ。
全文PDF

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Y 申立ての経緯および審理経過

年月日 審 理 内 容 等
2014年 7月27日 NHK、『NHKスペシャル 調査報告 STAP細胞 不正の深層』を放送
10月20日 申立人、NHKに「抗議書」を送付
11月 6日 NHK、申立人に「回答書」を送付
2015年 7月10日 申立人、委員会に「申立書」を提出
8月 5日 NHK、委員会に「経緯と見解」書面を提出
8月18日 第223回委員会、本件申立ての審理入りを決定
9月 1日 NHK、委員会に「答弁書」を提出
9月15日 第224回委員会 審理
9月17日 申立人、委員会に「反論書」を提出
10月 8日 NHK、委員会に「再答弁書」を提出
10月20日 第226回委員会 審理
11月17日 第227回委員会 審理
12月15日 第228回委員会 審理
2016年 1月19日 第229回委員会 審理
2月16日 第230回委員会 審理
3月15日 第231回委員会 審理
4月19日 第232回委員会 審理
4月26日 第233回委員会 申立人ヒアリング 審理
5月15日 申立人、委員会に「ヒアリング補充書面」を提出
5月17日 第234回委員会 審理
5月31日 第235回委員会 NHKヒアリング 審理
6月17日 NHK、委員会に「ヒアリング追加質問への回答」等を提出
6月21日 第236回委員会 審理
7月19日 第237回委員会 審理
8月 9日 第1回起草委員会
8月16日 第238回委員会 審理
9月 2日 第2回起草委員会
9月13日 第239回委員会 審理
10月18日 第240回委員会 審理
10月31日 第3回起草委員会
11月15日 第241回委員会 審理
11月30日 第4回起草委員会
12月20日 第242回委員会 審理
2017年 1月17日 第243回委員会 審理、「委員会決定」案を了承
2月10日 「委員会決定」を通知・公表

放送倫理・番組向上機構[BPO]
放送と人権等権利に関する委員会(放送人権委員会)

委員長 坂井眞
委員長代行 奥武則
委員長代行 市川正司市
委 員 紙谷雅子
委 員 城戸真亜子
委 員 白瀬佐和子
委 員 曽我部真裕
委 員 中島徹
委 員 二関辰郎
posted by Kose at 19:14| STAP

【BPO】「STAP細胞報道に対する申立て」に関する委員会決定(少数意見=NHKシンパ)

少数意見は二人で、いずれもNHK擁護派であるから、小保方サポーターの方は見ないでもいいが、かえって勧告が、マスメディアのヒートアップの中で小保方晴子氏の人権を侵害した構造全体の中で、中国人留学生のゴミである(ゴミであることは若山研関係者は知っていなければならないが、その点はBPOは取り上げていない)点を突破口に勧告を踏み切った点で「少数意見」という凡庸な多数意見を退けた点を評価するためになら読む価値がないわけではない。

全文PDFf

2017年(平成29年)2月10日 放送人権委員会決定 第62号
「STAP細胞報道に対する申立て」
放送倫理・番組向上機構[BPO]
放送と人権等権利に関する委員会(放送人権委員会)

2017年(平成29年)2月10日 放送と人権等権利に関する委員会決定 第62号

「STAP細胞報道に対する申立て」に関する委員会決定
― 勧 告 ―
申 立 人 小保方 晴子
被申立人 日本放送協会(NHK)
苦情の対象となった番組
『NHKスペシャル 調査報告 STAP細胞 不正の深層』
放送日時 2014年7月27日(日)午後9時〜9時49分
――――――――――(本文と補足意見は掲載済み)――――――――――
少数意見
1. はじめに
委員会決定は、「V 結論」で、次のように述べている。
 「以上の検討から、STAP細胞とされるES細胞は若山研究室の元留学生が作製し、申立人の研究室で使われる冷凍庫に保管されていたものであって、これを申立人が何らかの不正行為により入手し混入してSTAP細胞を作製した疑惑があるとする事実摘示については、名誉毀損の人権侵害が認められる」
 私は、この事実摘示の内容には同意できず、本件放送に申立人に対する名誉毀損の人権侵害があったとまでは言えないと考える。以下、できるだけ委員会決定の記述との重複を避けて簡潔に私見を述べる(必要に応じて委員会決定の該当部分を参照いただきたい)。

2. なぜ、名誉毀損なのか――委員会決定の骨子
 本件放送の関係部分(この表現は委員会決定を踏襲している)が摘示した事実として、委員会決定は次の4点をあげる( a)〜d)の表記と内容はカッコ内以外委員会決定の原文通り)。
a)STAP細胞の正体はES細胞である可能性が高い。
b)若山(照彦)氏の解析及び遠藤(高帆)氏の解析によれば、申立人の作製したSTAP細胞はアクロシンGFPマウスから作製されたES細胞である可能性がある。
c)STAP細胞は、若山研究室の元留学生が作製し、申立人の研究室で使われる冷凍庫に保管されていたES細胞に由来する可能性がある。
d)申立人には元留学生作製のES細胞を何らかの不正行為により入手し、混入してSTAP細胞を作製した疑惑がある。
続いてこれらの摘示事実が名誉毀損にあたるかどうかを、「(4)免責事由について」
で検討し、次の結論を導いている。
a)とb)には真実性があり、免責される。c)については、「このES細胞(「元留学生作製のES細胞」を指す)がSTAP細胞の正体である可能性があるという点には、以下の通り真実性・相当性は認められない」として、理由を述べている。d)は疑惑追及にとどまっているとはいえ、その前提となるc)の根幹部分の真実性・相当性が否定されている以上、当然真実性・相当性はない。免責事由となる真実性・相当性が否定されたc)とd)に関しては名誉毀損が成立する。
 以上が名誉毀損に係る委員会決定の骨子である。

3. なぜ、名誉毀損ではないのか――私の見解
上記の委員会決定の摘示事実のうち、a)とb)については、その真実性の判断を含めて異論はない。問題は、真実性・相当性がないとされたc)とd)である。
 この判断に関して、委員会決定は前段で「Dまでの場面とEとを連続したものと捉えている」ことが前提である、としている。D、Eは、委員会決定の「(2)関係部分の構成」に示されている。それぞれ次のような内容である。
 まずDは、自らの実験過程でES細胞の混入する可能性がなかったかどうか繰り返し調べたが、思い当たらなかったという若山氏の発言と、ES細胞のコンタミ(混入)が起こりえない状況を確保していたという申立人の記者会見での発言を紹介した部分。これを受けてEが続く。以下、いくぶん詳しく展開を見てみよう。
(ア) 画面が理研CDB(発生・再生科学総合研究センター)の建物を夜の闇の中でとらえた映像に変わる。
「取材を進めると、ES細胞をめぐって、ある事実が浮かび上がってきた」というナレーション。
(イ) 細胞の凍結保存チューブ60本が入った容器を上から写した写真の映像。「これは問題の発覚後、小保方氏(申立人)の研究室が使う冷凍庫から見つかったという容器の写真。中身はES細胞、若山研究室にいた留学生が作ったものだ」という説明のナレーション。
(ウ) 「実験用のES細胞を保存している」「若山研究室から譲与された」という申立人側の説明の紹介。
(エ) 「ところが、この細胞が、小保方氏の元にあるのは不可解だとする指摘が出ている。別の研究で解析中のもので、去年(2013年)若山研究室が山梨大学に移った際、もっていくことになっていたからだ」というナレーション。
(オ) 取材記者が元留学生に電話取材している場面。元留学生は、全部ES細胞であ
り、「STAPに関係あるところに見つかったのは(中略)本当にびっくりしましたね」、「(小保方氏に)それを直接私が渡したことはないですので」などと話す(カッコ内の「小保方氏に」は音声では聞こえないが画面の字幕に出る)。
(カ) 「なぜ、このES細胞が小保方氏の研究室が使う冷凍庫から見つかったのか。私たちは小保方氏に、こうした疑問に答えてほしいと考えている」というナレーション。
同一番組の同一パート(「STAP細胞は存在するのか?」というサイドマークが画面にある)なのだから、委員会決定が「Dまでの場面とEとを連続させて捉える」としたのは当然である。だが、摘示事実の判断において考慮すべきは、そうした意味の連続性ではない。焦点はES細胞に係る放送内容である。本件放送の関係部分で、この点に関して摘示される事実は、次の3点に整理できる。
@公開されていた遺伝子情報を遠藤氏が解析した結果、若山氏が申立人からSTAP細胞だとして渡された細胞(X)にはアクロシンGFPという特殊な遺伝子が組み込まれていることが分かった。
A若山研究室ではアクロシンGFPが組み込まれたマウスから作製したES細胞(Y)を作り、保管していた。
B申立人が使う冷凍庫から若山研究室の元留学生が作製したES細胞(Z)が見つかった。委員会決定は、XとYにはともにアクロシンGFPが組み込まれていることなどから摘示事実のa)とb)に真実性を認めた。先に述べたように、この点には異論はない。
しかし、c)とd)の摘示事実については、委員会決定の判断に同意できない。委員会決定は、c)とd)の摘示事実を導く際に、本件放送の関係部分は、X=Y=Zの可能性を伝えていると捉えている。なるほど、XとYは「アクロシンGFP」によって同一性が示されている。だが、X、YとZとの間に「アクロシンGFP」というつながりはない。上記した(ア)〜(カ)に明らかなように、EにはX、Y、Zの同一性に言及したナレーション等はない。つまり、委員会決定の理解と違って、本件放送の関係部分は、X=Y=Zの可能性にはふれていないのだ。
 NHKは、DとEとの間に、理研CDBの建物の映像と「取材を進めると、ES細胞をめぐって、ある事実が浮かび上がってきた」というナレーションが入っていることを理由に、EはDとは独立してES細胞をめぐって新たな事実が分かったことを伝えるものと主張している。先に指摘したように、視聴者がDまでの映像とEとを内容的に連続するものとして見るのは当然であり、「独立して」という認識は肯定できない。だが、ことES細胞に関しては、NHKの主張に一定の説得力があると私は考える。
 NHKによると、元留学生のES細胞(前記のZ)は、申立人がSTAP細胞作製に成功したとする2011年11月に先立つ同年7月に作製された。委員会決定は、この点などにふれた後、「しかし、これらの事情を超えて、若山氏や遠藤氏の解析対象となったSTAP細胞が、元留学生の作製したES細胞である可能性を裏付ける資料は示されていない」と述べる。しかし、先に述べたように、本件放送の関係部分はX=Y=Zの可能性にふれていないのだから、この点について「可能性を裏付ける資料」をNHKに求めるのは、「ないものねだり」である。
 以上の検討から、本件放送の関係部分の摘示事実――視聴者がどのように受け取ったかを考える。ごく分かりやすく記すと、次のようにまとめられるだろう。
A. STAP細胞は結局、従来からある別の万能細胞のES細胞だったらしい。
B. しかし、作製に係った若山氏、小保方氏(申立人)はともにES細胞混入の可能性を否定している。
C. ところが、小保方氏が使う冷凍庫にES細胞が保存されていることが分かった。これを作製した人物は「なぜ、そこにあるのか分からない。驚いた」と言っている。
D. やはり、ES細胞の混入あるいは何らかの不正行為があったのではないか。
 Dの疑惑を投げかけられたのは申立人である。A〜Dによって申立人の社会的評価は低下したことは明らかである。だが、A〜Cには名誉毀損の免責事由に当たる真実性が認められる。では、Dはどうか。すでに述べたように、本件放送の関係部分はCで言及されるES細胞(前記のZ)がSTAP細胞=ES細胞(前記のX=Y)と同一である可能性にはふれていない。しかし、Cは、ES細胞の混入可能性を否定していた申立人のもとに、あるはずのないES細胞があったという真実性が認められる事実を摘示しており、同様に真実性が認められるA、Bとあいまって、Dの疑惑を投げかける相当な根拠になっていると言うべきである。したがって疑惑を投げかけた報道という点では、Dにも相当性が認められる。
 以上の検討から、私は本件放送の関係部分に名誉毀損の人権侵害があったとまでは
言えないと考える。

4. 調査報道の意義と限界――放送倫理上の問題
 「夢の万能細胞」としてSTAP細胞がメディアに華々しく登場したのは2014年1月末だった。まもなくネイチャー誌掲載論文の内容に対してさまざまな疑問が噴出し、理研は調査委員会を設置する。調査委員会は同年4月、申立人に2件の研究不正があったとの結論を発表した。その後も新たな疑問点がメディアで報道される中、7月、掲載論文は撤回される。この過程では遺伝子解析からSTAP細胞の正体はES細胞ではないかという強い疑惑も浮上していた。しかし、理研はそうした疑惑に対応する調査を行わないまま、申立人も参加する検証実験(STAP細胞作製の再現実験)を始めた。こうした時間軸の中、本件放送が同年7月27日に放送された。私は、本事案を検討する際、こうした時間軸を考慮に入れることが重要だと考える。
 STAP細胞をめぐる疑惑は、現時点でも全体像が明らかになったとは言いがたい。本件放送が放送された時点では、さらに「霧の中」だった。しかし、一般の人々の認識は「どうやらSTAP細胞の正体は別の万能細胞であるES細胞らしい」というところには至っていただろう。つまり、この時期、「ES細胞の存在」が焦点になっていたのである。
 NHKは、STAP細胞をめぐる疑惑が浮上した初期から精力的に取材を重ね、独自ニュースも報じていた。本件放送は、そうしたNHKが、この焦点を見据えて取り組んだ調査報道番組である。公表されていない多くの資料を独自に入手し、専門家や関係者への取材を重ねて制作された。全体としては評価すべき調査報道の成果と言っていい。単にSTAP細胞の問題だけでなく、後半では研究不正が生まれる土壌にまで光を当てた点も深みのある内容になっている。
 犯罪事件における捜査機関に見られるように、当局の公式発表には情報の操作や隠ぺいの恐れがある。調査報道は、公式発表だけに依存することなく、独自の取材で得た情報を自己の責任において伝え、真実に迫ることを目指す。報道が国民の「知る権利」に奉仕すべき役割を持つことを考えれば、きわめて重要なジャーナリズム活動と言える。また、浮上した疑惑について速やかに真相が究明されるべき事態にあるにもかかわらず、当局にそうした動きが見えない状況にある場合にも、積極的に疑惑解明に資する調査報道が求められる。
 本件放送は、こうした意味での調査報道だった。先に時間軸を明らかにしたように、STAP細胞とES細胞の関係が焦点になっているにもかかわらず、理研はこの解明に積極的ではなく、申立人も加わった検証実験なるものを始めていたのである。
しかし、調査報道だからと言って名誉毀損などの人権侵害が許されないことは論を俟たない。評価すべき調査報道の成果と言っていい本件放送においても同様である。この点について、先に本件放送の関係部分の摘示事実の判断を示し、名誉毀損の人権侵害があったとまでは言えないとの私見を述べた。「……人権侵害はない」とせずに、「……人権侵害があったとまでは言えない」と表現していることに留意していただきたい。
 私は調査報道の持つ重要な役割に鑑みて、当委員会の決定が果敢な取材と報道の萎縮につながることは避けたいと考える。しかし、その見地に立っても、本件放送の関係部分には名誉毀損の人権侵害があったとまでは言えないものの、放送倫理上の問題があったことを指摘せざるを得ない。
 「3.なぜ、名誉毀損ではないのか――私の見解」で述べたように、本件放送の関係部分は、元留学生が作製したES細胞(前記のZ)と遺伝子解析でアクロシンGFPが組み込まれていることが分かったSTAP細胞=ES細胞(前記のX=Y)との異同にはふれていない。
 ところで、NHKはZの作製者である元留学生に電話取材した際、ZにアクロシンGFPが組み込まれているかどうかを確かめなかったのだろうか。すでに遺伝子解析でX=YにはアクロシンGFPが組み込まれていることが分かっているのだから、ZにアクロシンGFPが組み込まれていることを作製者から確認できれば、その事実を媒介にしてX=Y=Zが成立する。申立人に投げかける疑惑はより確かなものとなっただろう。こうした確認をしなかったとしたら、不十分な取材だった言わざるを得ない。むしろNHKは、ZにアクロシンGFPが組み込まれていないことを把握していたと考えるのが自然だろう。
 事実としてZにはアクロシンGFPは組み込まれていない。この点について、ヒアリング等でNHKは、遺伝子解析を行った遠藤氏の「元留学生のES細胞(前記のZ)がSTAP問題に関連していなかったと言うことは科学的には出来ない」という指摘にふれて、弁明とも取れる発言をしている。だが、ほかにSTAP細胞があったとしても本件放送の関係部分はあくまでもアクロシンGFPが組み込まれたSTAP細胞しか問題にしていないのだから、こうした弁明は「後付け」と言わざるを得ない。
 事態が「霧の中」にある状況での疑惑解明に取り組んだ調査報道番組であることを考慮しても、元留学生作製のES細胞(前記のZ)について言及する際、STAP細胞との関係に一定の留保をつけるべきではなかったか。たとえば、「アクロシンGFPが組み込まれていないため、現在の時点では遺伝子解析が行われたSTAP細胞とのつながりは明らかではないが、小保方氏(申立人)の研究室で使われている冷凍庫から、本来あるはずのないES細胞が見つかった」といった表現が考えられよう。
 「放送倫理基本綱領」(NHK・民放連)は「報道は、事実を客観的かつ正確、公平に伝え、真実に迫るために最善の努力を傾けなければならない」と規定している。本件放送の関係部分の取材において「真実に迫るために最善の努力」があったかどうかはともかく、少なくとも番組として提示した際の表現において、視聴者の誤解を招かないための最善の努力をしたとは思えない。私は、この点において本件放送の関係部分には放送倫理上の問題があると考える。全体としては評価すべき調査報道の成果であるだけに残念である。NHKには今後こうした放送倫理上の問題が生じないように努めることを要望する。
 なお、本件放送の関係部分以外にも、委員会決定は、メールの引用がプライバシー侵害に当たるかどうかという点や強引な取材方法などについて、人権侵害および放送倫理上の問題として取り上げている。これらについては委員会決定の趣旨におおむね異論はない。
以上、本事案の核心とも言うべき名誉毀損の人権侵害の存否にしぼって、私の見解を記した。
(奥 武則 委員)

少数意見
 私は、元留学生の作製したES細胞をめぐる疑惑に関する放送部分について、名誉
毀損とは考えず、放送倫理上の問題があったと考える。以下、多数意見と異なる部分
について述べる。
1 放送が示した事実をどのように考えるか。
 多数意見の決定理由は、本件放送が示した事実のb)として、若山氏の解析及び遠藤氏の解析によれば、申立人の作製したSTAP細胞はアクロシンGFPマウスから作製されたES細胞であることを印象づける放送であるとしている。しかし、私は、遠藤氏だけでなく若山氏の解析によってもSTAP細胞がアクロシンGFPを組み込んだES細胞に由来するのではないかとの疑惑が生じているとの印象を与えるとする点については、異なる意見を持つ。
 即ち、本件放送では、遠藤氏の解析結果の放送部分に先立つ放送部分で、若山氏が申立人に提供したはずのマウスの細胞とSTAP細胞の同一性を、2014年3月に解析している場面を放送しているが、ここではアクロシンGFPについての言及はない。次に、遠藤氏の解析結果の放送部分を受けて若山氏が再度登場する部分では、若山氏がアクロシンGFPを含むES細胞に心当たりがあったとは放送しているが、私は、一般の視聴者は、若山研究室の前述の解析に関する放送部分を振り返り、その解析対象のSTAP細胞もアクロシンGFPを含んでいたのではないかという、追跡的な視点を持って番組を見るとは解さない。したがって、本件放送が摘示した事実は、多数意見のa)とb)を併せて、
@ STAP細胞の遺伝子は、若山氏が申立人に渡したとされる、STAP細胞の元となったはずのマウスの遺伝子と異なっていた。
A 遠藤氏の解析結果を受けて、アクロシンGFPを組み込んでいる点でES細胞とSTAP細胞が共通するものがあることが発見された。
B @とAからすると、STAP細胞の正体はES細胞である可能性が高まってきた。
 という事実を示しているものであると考える。
 次に、多数意見の、本件放送が示した事実のc)として、「STAP細胞は、若山研究室の元留学生が作製し、申立人の研究室で使われる冷凍庫に保管されていたES細胞に由来する可能性がある」としたものとすることは、同意見である。
 次に、多数意見のd)として、「申立人は元留学生作製のES細胞を何らかの不正行為により入手し、混入してSTAP細胞を作製した疑惑がある。」とする部分については、私は、本件放送は、申立人が故意にES細胞を混入したとまでの表現をしているとは考えないので、「申立人は元留学生のES細胞を何らかの不正な行為で入手し、申立人がSTAP細胞を作製する過程でこのES細胞の混入が生じた、という疑惑がある」という事実を指摘していると考える。とすると、d)の後半部分とc)は同じ趣旨であるから、この部分の本件放送が摘示した事実を整理すると、前述の@からBに加えて、
C STAP細胞は、若山研究室の元留学生が作製し、申立人の研究室で使われる冷凍庫に保管されていたES細胞に由来する可能性がある。
D 申立人はこの元留学生のES細胞を何らかの不正な行為で入手した疑惑がある。
となる。

2 放送した事実の真実性の証明について
 1で整理した@、A、Bの事実については、多数意見とほぼ同様に、真実性の証明があると考える。
 また、CとDの事実の真実性を証明できていないということについても多数意見とほぼ同様である。
3 真実と考えたことの相当性について
(1) C「STAP細胞は、若山研究室の元留学生が作製し、申立人の研究室で使われる冷凍庫に保管されていたES細胞に由来する可能性がある。」について、放送当時、以下の事情があった。
 ア)@からBの事実にあるとおり、遠藤氏などの解析によってSTAP細胞とアクロシンGFPを組み込んだES細胞との共通点が示されたことによって、STAP細胞はES細胞に由来する可能性が強まってきた。
 イ)2014年当時、小保方研究室の冷凍庫には、元留学生の作製したES細胞のほか、他のES細胞も存在していた。このことにより、STAP細胞を作製した際にはES細胞のコンタミ(混入)が生じる環境になかったという申立人の発言はその信憑性に、より疑いが生じていた(なお、後日発表された理化学研究所のいわゆる第2次調査報告書によれば、STAP幹細胞の由来とされるES細胞と、この冷凍庫にあった他のES細胞が、ゲノム解析結果により、ほぼ同一であることが判明している)。
 以上の状況では、NHKの取材が、小保方研究室の冷凍庫に残されていた複数のES細胞にまで迫って、それらの中のいずれかのES細胞がSTAP細胞の由来となった疑いがあると推論したことに不合理な点はないと考える。
 しかし、さらに進んで、他にもES細胞がある中で、特に元留学生の作製したES細胞に焦点をあてて、これがSTAP細胞の由来ではないかとの疑惑があると信じたことについてはどうであろうか。この点については、
 ア) 元留学生の作製したES細胞は、2011年7月に樹立されており、その後の時期に作製されたSTAP細胞の由来となっていても時期的な矛盾はない。
 イ) 小保方研究室には、複数のES細胞が存在し、申立人はこれらのES細胞を若山研究室から譲与されたとしたが、その中の一部のES細胞を作製した元留学生は、自ら作製したES細胞が、何故、小保方研究室の冷凍庫にあったのかわからないと述べていた。この点について申立人はさらなる説明をしていない。
 以上の事情は存在するものの、元留学生の作製したES細胞が混入してSTAP細胞ができたのではないかという疑惑を裏付ける積極的な事情は示されていない。とすれば、元留学生の作製したES細胞とSTAP細胞を結びつける疑惑については、真実と信じたことの相当性があるとはいえない。
(2)D「申立人はこの元留学生のES細胞を何らかの不正な行為で入手した疑惑がある。」に関しては、以下の事情があった。
 申立人は、STAP細胞は、ES細胞とのコンタミが生じる可能性がない環境で作製されたと記者会見で述べていたが、その一方で、STAP細胞の正体はES細胞ではないかとの疑惑が生じており、申立人の周囲にES細胞が存在していた可能性が生じた。また、元留学生が、自ら作製したES細胞が何故小保方研究室にあったのかわからないと述べている状況の中で、小保方研究室の冷凍庫にES細胞が保管されるに至った経緯について、申立人は明確な説明をしていなかった。
 このような中で、本件放送が示した程度において、疑惑があるとNHKが信じたとしても、相当性はあると考える。

4 名誉毀損の成否について
以上によれば、私は、本件放送は、ES細胞がSTAP細胞の由来となった疑いがあるとの疑惑を示したこと以上に、特に元留学生の作製したES細胞に焦点をあてて、これがSTAP細胞の由来ではないかとの疑惑を示した点においては真実と信じたことが相当とはいえないと考える。
 しかし、この点についてのみ真実との証明ができず、真実と信じたことについて相当性がなかったとしても、この部分の摘示事実のみを捉えて申立人の社会的評価が相当程度低下したと評価することは考えにくく、その他の主要な部分が、真実であり、あるいは真実と信じたことについて相当性がある本件放送について、私は、委員会があえて名誉毀損とするべきものではないと考える。

5 放送倫理上の問題
 3で述べたとおり、NHKの取材が、小保方研究室の冷凍庫に残されていた複数のES細胞にまで迫り、それらの中のいずれかのES細胞がSTAP細胞の由来となった疑いがあると推論したことに不合理な点はないと私は考える。この点、NHKが独自の調査・取材によって事実を探求したことの意義が認められる。
 しかし、さらにすすんで、特に元留学生の作製したES細胞に焦点をあてて、これがSTAP細胞の由来ではないかとの疑惑があるように表現したことは、その部分のみとらえて名誉毀損とは評価しないとしても、不正確な放送で、勇み足である。一部に過ぎないから、などと問題を小さく捉えるべきではなく、今後、慎重に事実を伝える姿勢を持ち、表現にも留意するべきである。この点、報道は、事実を客観的かつ正確、公平に伝え、真実に迫るために最善の努力を傾けなければならないとする放送倫理上、問題がある。
 また、多数意見の、その他の放送倫理に関わる問題についての結論については同意見
である。
(市川 正司 委員)
posted by Kose at 17:32| STAP

小保方晴子氏にNHK人権侵害―BPO勧告関連ニュース集

NHKスペシャル「小保方氏への人権侵害」 BPO勧告
後藤洋平2017年2月10日14時24分
http://www.asahi.com/articles/ASK2B4HJWK2BUCVL00H.html
 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は10日、STAP細胞論文の研究不正問題を検証したNHKスペシャルについて、「名誉毀損(きそん)の人権侵害が認められる」とする勧告を出した。論文を書いた小保方晴子・元理化学研究所研究員に対する取材にも「放送倫理上の問題があった」と指摘。NHKに対して再発防止に努めるよう求めている。
 番組は2014年7月27日に放送された「調査報告 STAP細胞 不正の深層」。英科学誌「ネイチャー」に掲載された小保方氏らによるSTAP細胞論文を検証した調査報道で、放送後に小保方氏が「ES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」と主張。同委員会が15年8月から審理していた。
 NHK側は「『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであり、人権侵害ではない」と反論していた。(後藤洋平)


小保方氏への人権侵害認める=Nスペ「調査報告」−BPO
時事通信 2017/02/10-14:21
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017021000789&g=soc
 放送倫理・番組向上機構(BPO)放送人権委員会(坂井真委員長)は10日、2014年7月放送のNHKスペシャル「調査報告 STAP細胞 不正の深層」が、万能細胞のSTAP細胞を作成したとの論文を書いた小保方晴子氏の名誉を傷つけたとして、人権侵害を認め、再発防止を勧告する決定を公表した。
 番組は英科学誌「ネイチャー」に掲載されたSTAP細胞論文の不正疑惑を調査報道した。小保方氏は「胚性幹細胞(ES細胞)を盗んで実験を行ったとする断定的なイメージで番組が作られた」と同委に申し立てていた。NHKは「客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作した」と反論していた。
 同委は、不正行為により入手したとの事実は真実性、真実と信じるに足る相当性が認められないと結論づけた。


BPO「小保方氏の名誉を毀損」 NHKに勧告
中日新聞(共同) 2017年2月10日 14時46分
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2017021001001429.html
 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は10日、STAP細胞論文を検証した「NHKスペシャル」で、小保方晴子氏の名誉を毀損する人権侵害があったと認め、NHKに委員会の決定内容を放送し、再発防止に努めるよう勧告した。
 番組は、2014年7月放送の「調査報告 STAP細胞 不正の深層」。委員会は「(番組では)小保方氏が何らかの不正行為によってSTAP細胞を作製した疑惑があるなどと示したが、真実性・相当性が認められない」と判断し、名誉毀損を認めた。また小保方氏を取材班が追跡した行為についても「放送倫理上の問題がある」とした。


「NHKスペシャル」に勧告 BPO「人権侵害あった」 小保方晴子氏のSTAP細胞の論文不正問題で 
産経新聞 2017.2.10 14:13
http://www.sankei.com/affairs/news/170210/afr1702100012-n1.html
 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は10日、理化学研究所の小保方晴子元研究員らのSTAP(スタップ)細胞の論文不正問題を特集したNHKのドキュメンタリー番組「NHKスペシャル」について、「名誉毀損(きそん)の人権侵害が認められる」などとして、再発防止に努めるようNHKに勧告した。人権侵害による勧告は委員会の判断としては最も重い。
 委員会は番組内で、小保方氏が、ES細胞を不正行為により入手のうえ混入し、STAP細胞とした疑惑を報じたが、「具体的な根拠が示されていない」などとして「真実性・相当性が認められない」と結論づけた。
 番組は平成26年7月27日に「調査報告 STAP細胞 不正の深層」と題して放送。小保方氏がBPOに申し立て、27年7月に人権侵害の申立書を委員会に提出、8月に審理入りしていた。


随時追加
なおNHKニュース、19:20に放送。

小保方氏、Nスペ批判 「人生への影響、一生消えない」
朝日新聞 2017年2月10日18時51分
http://www.asahi.com/articles/ASK2B61RQK2BPLBJ005.html
 10日夕、小保方さんの代理人の三木秀夫弁護士は報道陣の取材に応じ、小保方さんのコメントを発表するなどした。内容は以下の通り。

 NHKスペシャルから私が受けた名誉毀損の人権侵害や放送倫理上の問題点などを正当に認定していただいたことを、BPOに感謝しております。NHKから人権侵害にあたる番組を放送され、このような申し立てが必要になったことは非常に残念なことでした。
 本NHKスペシャルの放送が私の人生に及ぼした影響は一生消えるものではありません。


「Nスペ」、小保方氏に人権侵害…BPO委員会
読売新聞 2017年02月10日 15時15分
http://www.yomiuri.co.jp/national/20170210-OYT1T50110.html?from=ytop_main2
 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会(坂井真委員長)は10日、STAPスタップ細胞の論文不正問題を扱ったNHKスペシャル「調査報告 STAP細胞 不正の深層」(2014年7月27日放送)に「名誉毀損きそんの人権侵害が認められる」とし、「過熱した報道がなされている事例における取材・報道のあり方について局内で検討し、再発防止に努める」ことをNHKに求める勧告を公表した。
 理化学研究所の小保方晴子・元研究員が2015年7月、同委員会に対し、人権侵害を訴える申し立てを行っていた。


NHKは放送と同じく、言い訳がましい。というか衆院予算委員会終わってないので、少し審議で訴状に昇かな?自民部会は了承しているが、民進党じゃダメだろうな。字句の揚げ足取りしかできないから。
STAP細胞 NHK番組にBPOが再発防止を勧告
NHK 2月10日 19時19分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170210/k10010872201000.html
NHKが3年前に放送したSTAP細胞の問題を検証した報道番組で、理化学研究所元研究員の小保方晴子氏が人権を侵害されたと申し立てたことについて、BPO=放送倫理・番組向上機構の委員会は「名誉毀損の人権侵害が認められる」として、NHKに対し、再発防止に努めるよう勧告しました。
3年前の7月に放送されたNHKスペシャル「調査報告STAP細胞不正の深層」について、理化学研究所元研究員の小保方晴子氏は人権を侵害されたとしてBPOに申し立てていました。
これについて、BPOの放送人権委員会は、10日、記者会見し、番組の一部について、「場面転換などへの配慮を欠いたという編集上の問題があり、小保方氏が元留学生作製のES細胞を不正行為により入手して混入し、STAP細胞を作製した疑惑があると受け取られる内容になっている」としたうえで、「名誉毀損の人権侵害が認められる」と指摘しました。
また、番組の放送直前に行われた小保方氏への取材について行き過ぎがあり、放送倫理上の問題があったとしました。
そのうえで、NHKに対し、再発防止に努めるよう勧告しました。
一方で9人の委員のうち2人が「人権侵害があったとまでは言えない」、「名誉毀損とするべきものではない」と、決定とは異なる意見を出しました。
決定について小保方氏は、代理人の弁護士を通じてコメントを出し、「私が受けた名誉毀損の人権侵害や放送倫理上の問題点などを正当に認定していただいたことをBPOに感謝しております。国を代表する放送機関であるNHKから人権侵害にあたる番組を放送され、このような申し立てが必要となったことは非常に残念なことでした。NHKスペシャルの放送が私の人生に及ぼした影響は一生消えるものではありません」としています。
一方、NHKは「BPOの決定を真摯(しんし)に受け止めますが、番組は関係者への取材を尽くし、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したもので、人権を侵害したものではないと考えます。今後、決定内容を精査したうえで、BPOにもNHKの見解を伝え、意見交換をしていきます。また、放送倫理上の問題を指摘された取材の方法については、再発防止を徹底していきます」としています。


Nスペ「人権侵害」に小保方氏「感謝している」
読売新聞 2017年02月10日 20時05分
http://www.yomiuri.co.jp/national/20170210-OYT1T50110.html?from=ytop_main4
 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会(坂井真委員長)は10日、理化学研究所の小保方晴子・元研究員らによるSTAPスタップ細胞の論文不正問題を検証したNHKスペシャル「調査報告 STAP細胞 不正の深層」(2014年7月放送)に小保方氏の名誉を傷つける人権侵害があったとして再発防止をNHKに求める勧告を公表した。
 番組はSTAP細胞の研究過程などを検証。小保方氏は、別の万能細胞を盗んで混入させたとの印象を視聴者に与え、名誉を毀損きそんされたなどとして15年7月に申し立てを行った。
 勧告は、小保方氏が不正行為で細胞を入手したとの疑惑を番組が指摘したとし、「真実性・相当性が認められない」として名誉毀損を認定。また、取材を断る小保方氏を追いかけたことは「放送倫理上の問題がある」と指摘した。
 小保方氏は「正当な認定で感謝している」とコメント。NHKは「真摯しんしに受け止めるが、番組は人権侵害ではない」とした。


小保方さん「人生に及ぼした影響は一生消えない」「正当な認定に感謝」とコメント…法的措置は検討せず BPO、NHKに勧告
産経新聞 2017.2.10 20:56
http://www.sankei.com/west/news/170210/wst1702100083-n1.html
 BPOの認定を受けて、小保方晴子さんは10日、代理人弁護士を通じ「名誉毀損(きそん)の人権侵害や放送倫理上の問題点を正当に認定していただき、BPOに感謝している」とのコメントを出した。
 大阪市内の事務所前で報道陣の取材に応じた代理人の三木秀夫弁護士によると、この日午後1時から約50分間、東京都内で小保方さんとともにBPO委員2人と面会。勧告内容について説明を受け、小保方さんは「ありがとうございます」と感謝していたという。
 三木弁護士も「極めて正当な判断をいただいた。NHKが勧告を真摯(しんし)に受け止めるものと期待している」と語り、名誉毀損訴訟などNHKに対する法的措置については「検討していない」とした。
 ただ、小保方さんはコメントの中で「放送が私の人生に及ぼした影響は一生消えるものではありません」とも言及。三木弁護士は近況について「いまだ精神的ダメージを負っており、療養中だ」と話した。


BPO

小保方氏「影響一生消えない」NHK人権侵害認定
http://mainichi.jp/articles/20170211/k00/00m/040/096000c
毎日新聞2017年2月10日 20時40分(最終更新 2月10日 21時07分)
 放送倫理・番組向上機構(BPO)が「NHKスペシャル」の人権侵害を認めたのを受け、小保方晴子氏は10日、代理人の三木秀夫弁護士を通じ、「放送が私の人生に及ぼした影響は一生消えるものではありません」とのコメントを出した。
 小保方氏はコメントで「人権侵害や放送倫理上の問題点を正当に認定してもらい感謝している」とし、「国を代表する放送機関であるNHKから人権侵害にあたる番組を放送され、このような申し立てが必要となったことは非常に残念なことだった」と振り返った。
 三木弁護士によると、小保方氏は現在も療養中で、BPO側からNHKに対する勧告について直接説明受けた。(共同)


NHK番組「人権侵害」でBPO認定 「不正に細胞入手」根拠なく
東京新聞 2017年2月11日 07時04分
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017021190070427.html
 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会(坂井真委員長)は十日、理化学研究所元研究員の小保方晴子(おぼかたはるこ)氏らのSTAP細胞に関する論文を検証した「NHKスペシャル」について、不正行為によってSTAP細胞を作製したと視聴者に受け取られる内容だったとして、小保方氏への名誉毀損(きそん)の人権侵害を認めた。NHKに委員会の決定内容を放送し、再発防止に努めるよう勧告した。勧告は、同委員会の判断の三段階で最も重い。 
 番組は「調査報告 STAP細胞 不正の深層」と題し、二〇一四年七月二十七日に放送された。同委員会は、番組が「小保方氏が何らかの不正行為によりES細胞を入手し、STAP細胞を作製したとの疑惑がある」と視聴者に受け取られる内容で、裏付ける根拠が示されておらず真実性が認められないと認定。看板番組の一つで、全国放送され、小保方氏が受けた名誉毀損の被害は小さくないと加えた。
 原因として、取材が不十分だったというよりも、配慮を欠いた「編集上の問題」を挙げ、説明を加えればこうした事態を避けることはできたとした。一方で、「この決定が調査報道を萎縮させるという見方は適当ではない」としている。
 また、取材を拒否する小保方氏をしつこく追跡し、挟み撃ちにする行為などは「放送倫理上の問題がある」と指摘した。その上で「小保方氏が世間の注目を浴びている点に引きずられ、不正の犯人として追及するような姿勢があったのではないか」と疑問視し、報道が過熱した事例の取材の在り方も検討するよう求めた。
 同委員会は弁護士ら九人の委員で構成。多数が名誉毀損による人権侵害に当たるとしたが、二人の委員からは「名誉毀損の人権侵害があったとまでは言えない」「名誉毀損とは考えず、放送倫理上の問題があった」とする意見も出た。
 小保方氏は一五年七月に人権侵害を申し立て、同委員会は同年八月から審理していた。
◆「番組の事実に誤りない」
 NHKの話 「真摯(しんし)に受け止めるが、人権侵害はしていないと考える。関係者への取材を尽くし、番組の中の事実関係に誤りはない」
◆「放送の影響一生消えない」
 小保方晴子氏の話 「放送が私の人生に及ぼした影響は一生消えない。人権侵害や放送倫理上の問題点が正当に認定され、感謝している」
◆BPO放送人権委員会の決定概要
▼小保方晴子氏が何らかの不正行為によりES細胞を入手し、STAP細胞を作製したとの疑惑は真実性・相当性が認められず、名誉毀損(きそん)の人権侵害が認められる
▼放送直前に行われた取材は、拒否する小保方氏を追跡するなど放送倫理上の問題があった
▼小保方氏と論文共著者との電子メールのやり取りを報じたことについては、科学報道番組としての品位を欠く表現方法だったが、プライバシーの侵害や放送倫理上の問題があったとまでは言えない
◆人権と研究は分けて
 研究不正に詳しい榎木英介・近畿大医学部講師の話 決定は重いものだと思う。実際にSTAP細胞問題が起こったころは、かなり突っ込んだ報道がされ、事実の確認以上にプライバシーを暴くような過剰な演出もあったように思う。その点はきちんと受け止めてほしい。ただ、小保方氏の人権は回復されるべきだが、だから研究の不正もなかったということにならないように気を付けるべきだ。二つの問題をきちんと切り分けて扱ってほしい。
<STAP細胞問題> 理化学研究所で研究していた小保方晴子氏らが2014年1月、マウスの細胞を刺激し新たな万能細胞の「STAP細胞」を作ったと英科学誌ネイチャーに発表した。理研の調査委員会は、論文の画像に捏造(ねつぞう)と改ざんの不正があったと認定。理研や小保方氏本人が実施した検証実験でSTAP細胞は作製できず、小保方氏は14年12月に理研を退職した。理研の調査委は、STAP細胞はES細胞の混入と結論付けた。
(東京新聞)

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【BPO】「STAP細胞報道に対する申立て」に関する委員会決定PDF全文のうち本文・補足意見

PDFをOCRにかけて補正したもの。少数意見が全体の半分以上を占めるみたいなので、本文と補足意見を先に掲載する。全文PDFはここをクリック。

2017年(平成29年)2月10日
放送人権委員会決定
第62号「STAP細胞報道に対する申立て」

放送倫理・番組向上機構[BPO]
放送と人権等権利に関する委員会(放送人権委員会)

2017年(平成29年)2月10日
放送と人権等権利に関する委員会決定
第62号

「STAP細胞報道に対する申立て」に関する委員会決定

― 勧 告 ―

申 立 人 小保方 晴子
被申立人 日本放送協会(NHK)
苦情の対象となった番組
『NHKスペシャル 調査報告 STAP細胞 不正の深層』
放送日時 2014年7月27日(日)午後9時〜9時49分

【決定の概要】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2ページ

【本決定の構成】
T 事案の内容と経緯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4ページ
 1.放送の概要と申立ての経緯
 2.論点
U 委員会の判断・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6ページ
 1.委員会の判断の視点について
 2.ES細胞混入疑惑に関する名誉毀損の成否について
 3.申立人と笹井芳樹氏との間の電子メールでのやりとりの放送について
 4.取材方法について
 5.その他の放送倫理上の問題について
V 結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21ページ
W 放送概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34ページ
X 申立人の主張と被申立人の答弁・・・・・・・・・・・・・・ 42ページ
Y 申立ての経緯および審理経過・・・・・・・・・・・・・・・ 49ページ

1

【決定の概要】
 NHK(日本放送協会)は2014年7月27日、大型企画番組『NHKスペシャル』で、英科学誌ネイチャーに掲載された小保方晴子氏、若山照彦氏らによるS
TAP細胞に関する論文を検証した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」を放送した。
 この放送に対し小保方氏は、「ES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権
侵害があった」などと訴え、委員会に申立書を提出した。
 これに対しNHKは、「『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不
当に侵害するようなものではない」などと反論した。
 委員会は、申立てを受けて審理し決定に至った。委員会決定の概要は以下の通りである。
 STAP研究に関する事実関係をめぐっては見解の対立があるが、これについて委員会が立ち入った判断を行うことはできない。委員会の判断対象は本件放送によ
る人権侵害及びこれらに係る放送倫理上の問題の有無であり、検討対象となる事実関係もこれらの判断に必要な範囲のものに限定される。
 本件放送は、STAP細胞の正体はES細胞である可能性が高いこと、また、そのES細胞は、若山研究室の元留学生が作製し、申立人の研究室で使われる冷凍庫に保管されていたものであって、これを申立人が何らかの不正行為により入手し混入してSTAP細胞を作製した疑惑があるとする事実等を摘示するものとなっている。これについては真実性・相当性が認められず、名誉毀損の人権侵害が認められ
る。
 こうした判断に至った主な原因は、本件放送には場面転換のわかりやすさや場面ごとの趣旨の明確化などへの配慮を欠いたという編集上の問題があったことである。そのような編集の結果、一般視聴者に対して、単なるES細胞混入疑惑の指摘を超えて、元留学生作製の細胞を申立人が何らかの不正行為により入手し、これを混入してSTAP細胞を作製した疑惑があると指摘したと受け取られる内容となってしまっている。
 申立人と笹井芳樹氏との間の電子メールでのやりとりの放送によるプライバシー侵害の主張については、科学報道番組としての品位を欠く表現方法であったとは言えるが、メールの内容があいさつや論文作成上の一般的な助言に関するものにすぎず、秘匿性は高くないことなどから、プライバシーの侵害に当たるとか、放送倫理上問題があったとまでは言えない。
 本件放送が放送される直前に行われたホテルのロビーでの取材については、取材を拒否する申立人を追跡し、エスカレーターの乗り口と降り口とから挟み撃ちにするようにしたなどの行為には放送倫理上の問題があった。
 その他、若山氏と申立人との間での取扱いの違いが公平性を欠くのではないか、ナレーションや演出が申立人に不正があることを殊更に強調するものとなっているのではないか、未公表の実験ノートの公表は許されないのではないか等の点については、いずれも、人権侵害または放送倫理上の問題があったとまでは言えない。
 本件放送の問題点の背景には、STAP研究の公表以来、若き女性研究者として注目されたのが申立人であり、不正疑惑の浮上後も、申立人が世間の注目を集めていたという点に引きずられ、科学的な真実の追求にとどまらず、申立人を不正の犯人として追及するというような姿勢があったのではないか。委員会は、NHKに対し、本決定を真摯に受け止めた上で、本決定の主旨を放送するとともに、過熱した報道がなされている事例における取材・報道のあり方について局内で検討し、再発防止に努めるよう勧告する。

T 事案の内容と経緯

1.放送の概要と申立ての経緯
 NHKは2014年7月27日、大型企画番組『NHKスペシャル』で、英科学誌ネイチャーに掲載された小保方晴子氏、若山照彦氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」を放送した。
 本件番組は、ネイチャーが同年7月にこの論文の取り下げを発表、「研究結果は白紙
にもどった」ことを受け、そうした論文が「なぜ世に出たか」を検証するとして、論文の画像・グラフの点検やSTAP細胞の由来などについて調査報道したもの。番組後半では、論文不正が起こる背景や不正を防ぐ取り組みなども紹介している。
 この放送に対し申立人はNHKに「抗議書」(2014年10月20日付)を送付し、申立人に対して著しい人権侵害行為があったと主張、「謝罪を含めた適正な対応」を求めた。NHKは「回答書」(同年11月6日付)で、本件番組には「不公正」「偏向」はなく「著しい人権侵害行為」にはあたらず、申立人の権利を違法に侵害するものではないと答えた。
 その後、申立人は2015年7月10日付で「申立書」を委員会に提出。その中で本件放送(本件番組のうち、後述の「W 放送概要」において示した部分を指す)がタイトルで「不正」と表現し、「何らの客観的証拠もないままに、申立人が理化学研究所内の若山研究室にあったES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」と訴えた。このほか、申立人への直接取材の際「違法な暴力取材を強行し」て、申立人を負傷させた、など様々な問題点を指摘した。
 NHKは人権侵害があったとする申立人の主張に対して、「今回の番組は、世界的な
関心を集めていた『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、2000ページ近くにおよぶ資料や100人を超える研究者、関係者の取材に基づき、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」と答えた。申立人に対して直接取材を行ったことに関しては、「安全面での配慮に欠ける問題のある取材手法であったと反省している」としたものの、その他、指摘された点については「問題はない」などと反論した。
 委員会は2015年8月18日に開催された第223回委員会で、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、審理入りすることを決め、19回にわたる審理、双方へのヒアリング、4回の起草委員会の開催などを経て委員会決定の通知・公表に至った。
 本件放送の概要については後述の「W 放送概要」、提出された書面やヒアリングを通じて明らかになった申立人の主張とそれに対する被申立人の答弁の概要は「X 申立人の主張と被申立人の答弁」のとおりである。申立てに至る経緯及び審理経過は末尾「Y 申立ての経緯および審理経過」に記載のとおりである。

2.論点
 申立人が主張する本件放送による人権侵害の有無と、それに係る放送倫理上の問題を検討するために委員会が取り上げる論点は以下のとおりである。
○ タイトルでの「不正」という表現の与える印象
○ 専門家の指摘の与える印象
○ CGやナレーション、その他演出の与える印象
○ 申立人が若山研究室のES細胞を盗んだという印象を与えるか
○ 実験ノートの引用方法とその放送に著作権法違反があったか
○ 申立人と笹井氏との間の電子メールの放送に問題があったか
○ 取材方法に問題があったか

U 委員会の判断

1.委員会の判断の視点について
 はじめに、委員会が本決定を行う際の視点を述べておきたい。申立人らによって執筆され、英科学誌ネイチャーに掲載されたSTAP細胞に関する論文(以下、2本の論文を合わせて「STAP論文」と言い、これらに関わる研究を概括して「STAP研究」と言う)は、2014年7月に取り下げられている。また、理化学研究所(理研)が設置した「研究論文に関する調査委員会」による「研究論文に関する調査報告書」(2014年12月25日。以下、「第2次調査報告書」と言う)は申立人が2つの実験・解析について不正行為を行ったと認定し、また、STAP幹細胞、FI幹細胞、キメラ、テラトーマがすべてES細胞の混入に由来するものであるとした。他方で、申立人は、STAP現象の実在をなおも主張している。また、第2次調査報告書による不正認定については、同報告書は「NHKが作りだした不公正な社会風潮のもと調査が行われ、作成されたもの」であって不正確なものであり、自身はPIすなわち研究室の責任者であった若山照彦氏に対して従属的な立場にあったもので、STAP研究の主たる責任は同氏にあると強く主張している。
 本来、STAP研究に関する事実関係をめぐる見解の対立について、調査権限を有さず、また、生物学に関する専門的な知見をもち合わせていない委員会が立ち入った判断を行うことはできない。こうした判断は委員会ではなく、科学コミュニティによってなされるべきものである。委員会の判断対象は本件放送による人権侵害及びこれに係る放送倫理上の問題の有無であり、検討対象となる事実関係もこれらの判断に必要な範囲のものに限定される。したがって、本件放送で触れられていない事情が考慮されるのも、こうした範囲内でのことである。

2.ES細胞混入疑惑に関する名誉毀損の成否について
(1)申立人の主張と判断方法
 申立人は、本件放送について、「申立人が理研内の若山研究室にあったES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたかのようなイメージを視聴者に想像させる内容」となっており、それが人権侵害に当たると主張する。ここでいう人権侵害とは、名誉毀損のことであると思われるので、以下その前提で判断する。
 名誉毀損があったかどうか、すなわち本件放送が申立人の社会的評価を低下させるものかどうかについては、一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準として判断すべきである。また、社会的評価の低下の有無を判断する前提として、本件放送によって摘示された事実がどのようなものであったかが問題となるが、これについても、一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準として判断する(最高裁2003年10月16日判決[テレビ朝日ダイオキシン報道事件])。

(2)関係部分の構成
本件放送のうち、ES細胞混入疑惑に関する名誉毀損の成否に関わる部分(以下、「関係部分」とも言う)について、ここではまずは番組の流れを確認する。その上で、次の(3)において本件放送による摘示事実がどのようなものであったかを検討する。
 関係部分は、「STAP細胞は存在するのか」と題するパートの一部であり、その流れは以下のようなものである。
@ ハーバード大学のジョージ・デイリー教授(以下、役職名や組織名は本件放送当時のもの)のインタビューを交えた同教授の研究を紹介する部分
 STAP細胞の再現実験に取り組んだが一度も成功していないことが述べられた上で、細胞が緑に光る現象は細胞が死ぬ直前に起きる現象だと考えている旨、及び、今のところ、論文に書かれたような方法ではSTAP細胞はできないと考えている旨の同教授の発言が放送されている。

A 若山氏がSTAP細胞の有無について検証していることを紹介する部分
 ここではまず、STAP細胞だとして申立人から渡されて培養され、若山研究室に残っていた細胞の遺伝子の解析結果について若山氏が説明を受ける場面が放送され、「いずれも129ではないです」というテロップが表示される。129とはマウスの系統のことであるが、このこと自体についての説明はなされていない。
 同じく若山氏による検証の紹介部分では続いて、上記の遺伝子解析の結果が説明される。STAP細胞は、申立人が若山氏から渡されたマウスから作製していたはずであり、このため、作製されたSTAP細胞と元になったマウスとは遺伝子が一致するはずである。しかし、遺伝子解析の結果、両者は異なるものであったことが述べられる。これを受けて、「すべて僕のほうにミスがないっていうのを、自分で納得しないと先に進めない」などの若山氏の発言が放送されている。

B 理研の遠藤高帆上級研究員による解析結果を紹介する部分
 独自に検証に乗り出した遠藤氏が、公開されていたSTAP細胞に関連する遺伝子情報を解析し、若山氏が申立人から渡された細胞には、アクロシンGFPという精子で発現する特殊な遺伝子が組み込まれていることが分かったとされる。ここでは、アクロシンはSTAP研究にはまったく必要がないとか、STAP細胞は調べれば調べるほど存在自体がわからなくなってくるといった遠藤氏の発言も放送されている。

C 遠藤氏の解析結果を知らされた若山氏の反応とES細胞混入疑惑の提示部分
 若山氏にはアクロシンGFPが組み込まれたマウスに心当たりがあった。若山研究室では、そのマウスからES細胞を作製し保管していたからである。これを受けて本件放送は、「小保方氏から受け取った細胞に、このES細胞が混入していたのではないか」、と疑問を提起する。

D この疑問に対する若山氏と申立人の主張を紹介する部分
 若山氏は、自らの実験の過程でES細胞が混入する可能性がなかったか繰り返し調べたが、思い当たらなかったという。一方、申立人に関しては、ES細胞のコンタミ(混入)ということが起こり得ない状況を確保していた、という2014年4月9日の記者会見での発言を放送するなどしてその主張が紹介された。

E 不正疑惑の発覚後、申立人の研究室で使われる冷凍庫から見つかった細胞に関す
る部分
 Dの場面のあと、若山氏や申立人の研究室のあった理研CDB(発生・再生科学総合研究センター)の建物の映像を背景に、「取材を進めるとES細胞をめぐって、ある事実が浮かびあがってきた」というナレーションが入る。そののち、冷凍庫から細胞チューブの入った容器が見つかったという話題に移る。その内容物であるES細胞は若山研究室にいた元留学生が作製したものであり、申立人は、実験用のES細胞を若山研究室から譲与されて保存していると説明してきたと放送される。ところが、この細胞は、「去年」すなわち2013年に若山研究室が山梨大学に移転する際に持っていくことになっていたものであり、申立人の元にあるのは不可解であるという指摘があるとの紹介がされる。そして、このES細胞を作製したという元留学生が、電話インタビューで、これがSTAPと関係あるところに見つかったこ
とに驚いたこと、それを申立人に直接渡したことはないことを述べる音声が放送される。これを受けて「なぜこのES細胞が、小保方氏の研究室が使う冷凍庫から見つかったのか。私たちは、小保方氏にこうした疑問に答えて欲しいと考えている」というナレーションが流れる。

F まとめの部分
 ここでは、さらに次のようなナレーションが流れる。「これまでの取材では、STAP細胞の再現実験に成功した研究者はいない。さらに残されていた細胞について解析したところ、実験に使われたはずのマウスとは異なる遺伝子が検出された。ES細胞ではないかという疑いも浮かびあがっている。次々と指摘される新たな疑惑に対して、理研は調査を先送りにしてきた。明確な答えを示さないまま、小保方氏によるSTAP細胞の検証実験を進めようとしている」等である。その上で、これらのナレーションへの反論として、CDBの竹市雅俊センター長が検証実験の意義を強調するインタビュー発言が放送され、次の「エリート科学者 問われる責任」と題するパートに移る。

(3)関係部分による摘示事実とその真実性
 一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準とすれば、関係部分による摘示事実は以下のようなものであると言える。

a)STAP細胞の正体はES細胞である可能性が高いということ(@からFまでの全体、直接的にはCより)
 Cでは、「小保方氏から受け取った細胞に、このES細胞が混入していたのではな
いか」という疑問形が用いられており、STAP細胞の正体がES細胞であると断定的に述べたものとまでは言えないが、本件放送が、他の仮説に言及することなくES細胞説で全体の説明を組み立てていることからすると、可能性の高い仮説として提示しているものと理解される。
b) 若山氏の解析及び遠藤氏の解析によれば、申立人の作製したSTAP細胞はアクロシンGFPマウスから作製されたES細胞である可能性があること(AからCより)遠藤氏の解析対象となったSTAP細胞がアクロシンGFPの組み込まれたものである点は番組中で明示されているが、番組で紹介された場面で行われた若山氏の解析の対象となった細胞については特に説明がない。実際には両解析において対象となった細胞は別のものであり、若山氏の解析対象となったSTAP細胞はアクロシンGFPマウス由来のものではない。しかし、STAP細胞にはいくつかの種類があることが番組では説明されていないため、そのような知識のない一般視聴者は、若山氏にアクロシンGFPが組み込まれたマウスに心当たりがあり、若山研究室ではそのマウスからES細胞を作製し保管していたとされた上で、「小保方氏から受け取った細胞に、このES細胞が混入していたのではないか」と放送されることによ
って(BからC)、若山氏が解析対象としたSTAP細胞も遠藤氏が解析したSTAP細胞と同じもの、つまり、アクロシンGFPの組み込まれたES細胞である可能性があると受け止めるだろう。

c) STAP細胞は、若山研究室の元留学生が作製し、申立人の研究室で使われる冷凍庫に保管されていたES細胞に由来する可能性があること(@からFまでの全体、直接的にはDEより)このように摘示事実を理解する前提には、「STAP細胞は存在するのか」と題す
るパートのうちの、@からDまでの場面とEとを連続したものと捉えていることがある。それにより、遠藤氏の解析対象のSTAP細胞、若山氏の解析対象のSTAP細胞、若山研究室に保管されていたアクロシンGFPの含まれるES細胞、さらに若山研究室の元留学生が作製したES細胞という4つの細胞が同一のものであると断定こそされていないが、EをDまでの部分と連続したものと受け取られる編集によって、そのような可能性があるという上記の摘示事実が示されたと言える。
 これに対してNHKは「場面転換の映像とコメントによって、構成上、区切りがつくように配慮した」として、EはDまでの場面とは独立したものであって、Dまでの場面で登場するES細胞とEで取り上げられるES細胞とは別のものとして放送されていると主張する。「場面転換の映像とコメント」とは、Dの場面のあと、CDBの建物を背景に、「取材を進めるとES細胞をめぐって、ある事実が浮かびあがってきた」というナレーションが入っていることを指していると思われる。
 しかし、まず、Cで若山研究室ではアクロシンGFPが組み込まれたマウスからES細胞を作製して保管していたとし、「小保方氏から受け取った細胞に、このES細胞が混入していたのではないか」とES細胞の混入疑惑を指摘している。そののち、Dでは若山氏と申立人の双方が混入の可能性を否定していることを紹介した上で、Eでは、取材を進めると、申立人の研究室にはES細胞が保管されていたことが判明したとし、元留学生の作製したES細胞が「申立人の元にあるのは不可解である」(したがって、混入の可能性もありうる)という指摘がなされている。以上のように、CからEは、いずれも混入の可能性に関わる内容であるから、一般視聴者はこれらを一連のものとして見ると理解するのが自然である。
 NHKの主張通りEを独立した内容であると捉えるためには、次に述べる通り、DとEとの間に2年以上の間隔があることを意識する必要があるが、これらの場面においてこの点が強調されているわけではないから、一般視聴者がこうした時系列を意識して視聴するわけではないだろう。また、仮に、意識的に時系列に関心をもって視聴する者を前提とした場合には、次に述べる通り、Eの場面をおいた趣旨の理解は困難となってしまう。結局、いずれの場合でも、Dまでの場面とEとを連続させて捉えるのが自然であるといえる。
 すなわち、Eは、問題発覚後の申立人の冷凍庫から入手経緯の不明なES細胞が発見されたという内容であるが、STAP研究が行われていた時期(番組では、キメラ実験が成功したとされるのは2011年11月だと紹介されている)と、この元留学生のES細胞が発見された時期(番組中で明示されないが、「問題発覚後」が、STAP研究に疑義が呈され始めた時期を指すとすれば、それは2014年2月である)とは2年以上異なる。NHKが主張するように「EはDまでの場面とは独立したものであって、Dまでの場面で登場するES細胞とEで取り上げられるES細胞とは別のもの」とみるのであれば、なぜDまでの場面に続けてSTAP研究から2年以上経過した時点における元留学生作製のES細胞の保管状況に疑問を呈する
部分(E)が放送されたのか、その趣旨を理解するのが困難である。すなわち、アクロシンGFPが組み込まれたES細胞が混入したのではないかというSTAP研究当時の混入の可能性を指摘した部分(BC)を放送し、それに続けて、STAP研究から2年以上経過した時点における元留学生作製のES細胞の保管状況を紹介した後に、「なぜこのES細胞が、小保方氏の研究室が使う冷凍庫から見つかったのか」と疑問を呈するナレーション(E)がされたのか、Dまでの場面で登場するES細胞とEで取り上げられるES細胞とは別のものであるというNHKが主張する前提では、その意味が理解できないだろう。
 結局、一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方の観点からは、前述のようにCからEを一連のものと見るのが自然であるが、意識的に時系列に関心をもって視聴する注意深い視聴者にとっても、以上述べたように、DEは一連のものと理解されると言えるのである。
 NHKは、Eの場面を独立のものとして放送したのは、理研が当時、申立人の研究室に残存していた試料等についての調査に消極的であったことを指摘するためであると主張している。しかし、Eでは、NHKの主張する上記のような趣旨についての明示的な説明はおろか、理研という言葉すら出てきておらず、逆に、最後のナレーションは、先ほども指摘したように「なぜこのES細胞が、小保方氏の研究室が使う冷凍庫から見つかったのか。私たちは、小保方氏に(「小保方氏に」原文傍点)こうした疑問に答えて欲しいと考えている」(傍点は委員会による)というもので、問いかけの対象は申立人である。こうした点からすると、この部分が理研を批判する趣旨のものであると受け止めることはできないだろう。さらに、Eはあくまで「STAP細胞は存在するのか」について扱うパートの一部なのであり、その後Fが挟まれたうえ、「エリート科学者問われる責任」という理研の対応を批判するパートに移るという構成になっているのである。
 以上からすると、Eの場面を独立のものとして一般視聴者は見るはずであるというNHKの主張には説得力がなく、一般視聴者はDまでの場面とEとを連続したものと理解するものと考えられる。

d) 申立人は元留学生作製のES細胞を何らかの不正行為により入手し、混入してS
TAP細胞を作製した疑惑があること(@からFまでの全体、直接的にはDEより)
 申立人は、「全体の構成として、申立人が理研内の若山研究室にあったES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたかのようなイメージを視聴者に想像させる内容になっている」とし、本件放送は、申立人がES細胞を盗み、それを混入したことを断定的に述べるものであると主張する。そこで、疑惑に言及するEの場面について、疑惑の提示にとどまっているのか断定に至っているのかを検討する。
 番組では、具体的な不正行為を意味するような言葉は用いられていないものの、まず、このES細胞について、申立人が実験用のES細胞を若山研究室から譲与されたと説明してきたことを紹介した上で、それが本来は若山研究室の移転に伴って山梨大学に持っていくことになっていたと説明される。加えて、STAP細胞と関係のあるところに見つかったことに驚いた、申立人に直接渡したことはないという元留学生の発言を放送するという構成になっている。このような流れからすれば、このES細胞は申立人の研究室にあるはずのものではなく、何らかの不正行為によって入手したものであることが示唆されていると言える。しかし、それ以上に具体的な指摘はなく、Eの最後のナレーションが「なぜこのES細胞が、小保方氏の研究室が使う冷凍庫から見つかったのか。私たちは、小保方氏にこうした疑問に答えて欲しいと考えている」という問いかけにとどまっていることからすれば、本件では、何らかの不正行為によってES細胞を入手し、混入したと断定したとまでは言えず、疑惑の提示にとどまっていると考える。

 以上をまとめると、本件放送の関係部分による摘示事実は以下の通りである。
a) STAP細胞の正体はES細胞である可能性が高い。
b) 若山氏の解析及び遠藤氏の解析によれば、申立人の作製したSTAP細胞はアクロシンGFPマウスから作製されたES細胞である可能性がある。
c) STAP細胞は、若山研究室の元留学生が作製し、申立人の研究室で使われる冷凍庫に保管されていたES細胞に由来する可能性がある。
d) 申立人には元留学生作製のES細胞を何らかの不正行為により入手し、混入してSTAP細胞を作製した疑惑がある。
 これらの事実(とりわけd)の事実)を摘示することが申立人の社会的評価を低下させることは明らかである。

(4)免責事由について
社会的評価を低下させるような放送であっても、放送によって摘示された事実が公共の利害に関わり、かつ、主として公益目的によるものであって、当該事実の少なくとも重要部分が真実であるか又は真実と信じることについて相当の理由があることがNHKによって証明された場合には、名誉毀損による人権侵害には当たらない。
 また、委員会は、疑惑報道の萎縮を可能な限り避けるという観点から、疑惑を指摘する場合には、断定を避けてあくまでも疑惑の提示として理解されるように配慮されており、かつ、当該疑惑の指摘に相当の理由があるのであれば、名誉毀損の人権侵害には当たらないという考え方を採用してきた(決定第51号「大阪市長選関連報道への申立て」、第55号「謝罪会見報道に対する申立て」参照)。
 以下ではこれらの点について検討する。

@ 公共性・公益目的について
上記関係部分による摘示事実は、容易に作製できる新たな万能細胞の発見であり、再生医療の発展にも大きな寄与をなしうる画期的な研究として国民的、さらには国際的な注目を集めたSTAP研究に疑義が生じたことを受け、STAP細胞だとされたものの正体を明らかにしようとする調査報道であるから、高い公共性を有する。
 また、本件番組は、国民的・国際的な注目を集めたSTAP研究に関する不正の内容について報道するとともに、より一般的に、研究不正が頻発する背景にはどのような事情があり、どのような解決策がありうるのかということにまで踏み込むもので、本件放送はその内容をなすものとして高い公共性が認められる。
 次に、公益目的については、本件番組が上記のように高い公共性を有する内容を、多くの資料や研究者・関係者への取材に基づいて放送することによって視聴者の関心に応えようとするものであるから、その内容をなす本件放送には主として公益を図る目的が認められる。

A 真実性・相当性について
摘示事実a)――STAP細胞の正体はES細胞である可能性が高い――について
 STAP論文を掲載したネイチャー誌が2015年9月24日付電子版において、各国の研究チームの研究成果を掲載するとともに、STAP現象が真実ではないことが立証されたと指摘した。このこと等により、STAP細胞が存在しないことは科学コミュニティの共通理解となっているものと思われる。他方、STAP細胞の正体については、理研の第2次調査報告書ではES細胞説がとられ、この立場は上記のネイチャー電子版に掲載された理研の研究チームの論文でも維持されているとのことであり、そこからすれば、ES細胞説が少なくとも有力な仮説であると言いうるから、摘示事実a)には真実性又は相当性が認められると考えられる。
 なお、申立人は、刺激によってOct4遺伝子が陽性となって細胞が発光する現象が見られることをもって、STAP現象が存在すると主張しているが、ここで問題となるのは、キメラマウス実験の成功などによって万能性がより厳密に証明されたSTAP細胞のことであり、そのような現象の存在によって上記の判断を覆すことはできない。

摘示事実b)――若山氏の解析及び遠藤氏の解析によれば、申立人の作製したSTAP細胞はアクロシンGFPマウスから作製されたES細胞である可能性がある――について
 若山氏が解析対象としたSTAP細胞のうち、FLSと呼ばれるものにアクロシンGFP遺伝子が組み込まれていることは、若山氏による解析結果のみならず、第2次調査報告書でも認められており、その重要部分において真実性が認められる。遠藤氏の解析の結果についてなされた「若山氏が小保方氏から渡されたという細胞には、『アクロシンGFP』という特殊な遺伝子が組み込まれていることがわかった」という説明についても、真実性が認められる。
 これらの事情と摘示事実a)の真実性・相当性について述べたことからすれば、
摘示事実b)には真実性又は相当性が認められる。

 摘示事実c)――STAP細胞は、若山研究室の元留学生が作製し、申立人の研究室で使われる冷凍庫に保管されていたES細胞に由来する可能性がある――について
 元留学生が作製したES細胞が問題発覚後の申立人の研究室の冷凍庫で保管されていたこと自体は真実だと認められるが、次に述べる通り、このES細胞がSTAP細胞の正体である可能性があるという点には、以下の通り真実性・相当性が認められない。
 NHKによれば、このES細胞は、STAP細胞実験が最初に成功したとされる2011年11月に先立つ同年7月に樹立されている。また、作製者である元留学生は、若山研究室でSTAP研究が行われていた時期には、同研究室で核移植ES細胞の実験などを行っており、2012年3月上旬には、若山研究室で最初に申立人からSTAP細胞の作製方法の教示を受けたという。さらに、同年10月の帰国前にはSTAP細胞に関連するテーマで実験を行っていた。
しかし、これらの事情を超えて、若山氏や遠藤氏の解析対象となったSTAP細胞が、元留学生の作製したES細胞である可能性を裏付ける資料は示されていない。NHKは「留学生のES細胞が、STAP問題に関連していなかったと言うことは科学的には出来ない」という遠藤氏の指摘を引用しているが、可能性が否定しきれないという程度では、摘示事実c)の真実性が証明されたとは言えない。また、摘示事実c)について真実であると信じるについて相当性があることを示す資料も示されていないから、相当性も認められない。

摘示事実d)――申立人は元留学生作製の細胞を何らかの不正行為により入手し、混入してSTAP細胞を作製した疑惑がある――について次に述べる通り、真実性・相当性は認められない。
 まず、摘示事実c)の真実性・相当性の検討の際に示した通り、元留学生のES細胞がSTAP細胞であった可能性に真実性・相当性が認められない以上、元留学生のES細胞を混入してSTAP細胞を作製したとの疑惑は、真実性・相当性のいずれも認められない。次に、申立人が元留学生作製の細胞を何らかの不正行為により入手したとの点についても、その真実性・相当性を基礎づける資料は示されていない。
 もっとも、ここで問題としているのは、何らかの不正行為による入手や混入そのものの真実性・相当性ではなく、これらの点について疑惑をかけるだけの相当の理由があったかどうかということである。この点を考えてみると、まず、元留学生のES細胞を何らかの不正行為によって入手したという疑惑については、確かに、この細胞が申立人の研究室の冷凍庫に保管されるに至った経緯については申立人とNHKとの間で主張に食い違いがあり、不透明なところがある。しかし、疑惑を提示するについての相当の理由があることがNHKによって証明される必要があるところ、何らかの不正行為による入手疑惑については具体的な根拠が示されていないし、そもそもSTAP細胞が元留学生のES細胞であるとの可能性についても真実性・相当性が認められないから、結局、この点を前提とする摘示事実d)についても疑惑をかけるだけの相当な根拠はないと言わざるをえない。

(5) 小括
 これまでの検討をまとめると、本件放送におけるES細胞混入疑惑に関する部分は申立人の社会的評価を低下させるものであり、摘示事実a)、b)については真実性又は相当性が認められるが、摘示事実c)及びd)については真実性と相当性のいずれもが認められないから、これらの点については名誉毀損の人権侵害が認められる。また、不正疑惑の発覚後、申立人は心的外傷後ストレス障害(PTSD)で治療を受ける事態に至っている。これは申立人に対するマスメディアによる、あるいはインターネット上での過熱したバッシングが数か月にわたって継続したことなどの結果であり、本件放送の影響は全体から見れば一部に過ぎないとはいえ、本件放送がNHKの看板番組の1つである『NHKスペシャル』として全国に放送され、相応の社会的影響があったことからすれば、本件放送による名誉毀損によって申立人の受けた被害は小さいものではない。

3. 申立人と笹井芳樹氏との間の電子メールでのやりとりの放送について
(1)当事者の主張と判断方法
 本件放送の「エリート科学者 問われる責任」と題するパートでは、2度に渡ってネイチャーを含む有名科学誌への掲載を不可とされたSTAP論文が、3度目の投稿では一転して高評価を得て掲載に至った背景に、論文執筆の天才ともいわれる笹井芳樹CDB副センター長による申立人への助言があったことが指摘されている。その上で、申立人と笹井氏との間でやり取りされた電子メールがそのまま放送され、また、それぞれ女性と男性のナレーターによって読み上げられた。
 これについて申立人は、両者の同意なく完全に無断で公開され、完全にプライバシーの侵害であり、また、通信の秘密に対する侵害行為であると主張している。これに対してNHKは、笹井氏が論文作成にどの程度関与していたかを示す資料として重要であり、また、利用されている電子メールアドレスは理研から職務上付与されているものであって、違法なプライバシー侵害に当たらないと主張する。
 一般に、メールの内容を第三者に開示あるいは一般に公表されないことに対する社会的な期待が存在し、それは正当な期待であると言えるから、メールの内容はプライバシーに属すると考えられる。このことは、職務上付与されたメールアドレスを用いてなされた業務上のメールであっても、少なくとも第三者による公表との関係では、ひとまずは同様に考えられる。
 しかしながら、プライバシーに属する情報であっても、報道の自由との調整の観点から、公共性と公益性のある報道目的のために相当な範囲・方法で公表することは許される。相当な範囲・方法の検討にあたっては、報道目的との関連性・必要性の程度や当該メールの内容の秘匿性の程度も考慮すべきである。

(2) 本件放送でのメールのやり取りについて
 本件放送では、笹井氏と申立人のメールが1通ずつ、いずれもパソコン画面上に表示されたメールの文面を背景にその一部をナレーターが読み上げる形で紹介されている。
 笹井氏のメールは、男性の声で、「小保方さん、本日なのですが、東京は雪で寒々しております。2回目の樹立のライブイメージングはムービーにしたらどんな感じでしたでしょうか?小保方さんとこうして論文準備ができるのをとてもうれしく楽しく思っており、感謝しています」という部分が読み上げられた。
 申立人のメールは、女性の声で、「笹井先生フィギュア(図)の仮作りができそうですので、また近いうちにご相談に伺わせていただけないでしょうか。宜しくお願いいたします」という部分が読み上げられた。
 これについてNHKは、笹井氏が画像やグラフの作成に関して具体的な指示を出していたことを裏付けるものであり極めて重要なものであると主張する。しかし、読み上げられた上記のような内容は、確かに論文作成のための助言に関わる内容ではあるものの、具体的な指示とはいいがたく、報道目的にとって必要不可欠とは言えない。
 とはいえ、メールの内容は本題の前置きとなるあいさつや、論文作成上の一般的な助言に関するものにすぎず、秘匿性は高くない。
 このような内容のメールを紹介することは、公共性と公益性のある報道目的のために相当な範囲・方法を逸脱しているとまでは言えない。したがって、不当なプライバシー侵害とまでは言えない。
 なお、申立人は、この場面は科学報道番組という目的からするとまったく重要でない部分であって、また、男性と女性とのそれぞれの声優による感情をこめたような読み上げ方をしていて、あたかもその男女間にただならぬ関係があるかのような誤った印象を与えるとしている。確かに、本件放送に先立って一部の週刊誌が笹井氏と申立人との男女関係をうかがわせる記事を掲載しており、こうした記事の内容を知る視聴者は、本件放送でのメールの読み上げを聞いてそうした関係を想起するだろう。その点、科学報道番組としての品位を欠く表現方法であったとは言える。しかし、本件放送中ではそれ以上に男女関係を示すような内容はなく、一般視聴者がこの場面から、両者の間に実際にそのような関係があったという印象を受けるとまでは言えない。
 したがって、一部の視聴者に対しては誤解を与えるような紹介の方法であった点で配慮が十分でなかったものの、それを超えてプライバシーの侵害に当たるとか、放送倫理上問題があったとまでは言えない。

4. 取材方法について
(1) ホテルのエスカレーターでの状況について
 本件放送が放送される直前の2014年7月23日夜、神戸市内のホテルにおいて事前のアポイントメントなくNHKによる申立人への取材が行われたが、申立人はその場において傷害行為を受けたと主張している。
 この時の取材の状況について、取材から逃れようとしてホテル内のエスカレーターを降りようとする申立人を、NHKの記者やカメラマンがエスカレーターの乗り口と降り口とから挟み撃ちにするようにした等の点については両者の主張はおおむね合致しているが、その際に身体的接触があったか否かについては主張が食い違っている。
 この点について委員会が確定的な事実認定を行うことはできないが、頚椎捻挫及び右肘筋挫傷により全治14日間の見込みであるとする診断書(取材の翌日付)が存在することからすれば、身体的接触があった可能性も否定できず、少なくとも取材の際の激しい動きによってこうした異常をきたした可能性はある。
 仮に取材時の状況がNHKの主張の通りであったしても、3名の男性記者やカメラマンが二手に分かれてエスカレーターの乗り口と降り口とから挟み、通路を塞ぐようにして取材を試みたり、それを避けるため別な方向に向かった申立人に記者が話しかけるなど、NHKも認める通り行き過ぎがあったことは明らかである。一般論として、アポイントメントなしで直接取材を試みることが許されないわけではないとしても、取材を拒否する申立人を執拗に追跡して上記のような行為に及んだのは行き過ぎである。

(2)その前後の状況について
 さらに、上記のエスカレーターでの場面の前後の状況について、申立人は以下のように主張している。理研の敷地から出る時点からバイク隊に追跡されていたため、行き先を変更して上記のホテルにいったん入り、付き人が迎えに来るまでトイレで待っていた。1時間ほど後に迎えがきてトイレから出るとNHKの記者等からいきなりカメラやマイクを向けられ周囲を取り囲まれたため、そこから逃れるために下りのエスカレーターに乗ったところ、上記のような状況になった。エスカレーターでの場面の後も、NHKによる追跡は続き、トイレにも女性記者が入ってくるなどの状況も生じ、最後はホテルの従業員通路から外部に脱出するに至ったという。
 これらの事実についても、確定的な事実認定は困難であるが、NHKは特に反論をしておらず、これらの事実が実際にあった可能性は高いと言える。

(3) 小括
 確実に言えることは、エスカレーターでの状況に関するNHKの主張を前提にしても、放送倫理上の問題があったことは明らかであるということである。さらに、(2)で言及したような状況があったとすれば、なお問題が大きいことは言うまでもない。
 NHKはすでに申立人に謝罪を行い、この際に撮影した映像は放送しないことを約束し、実際に本件放送でも使用されていない。このように一定の措置がとられていると認められるが、再発防止に向けた取り組みが求められる。

5. その他の放送倫理上の問題について
(1)若山氏と申立人との間での取扱いの違いと公平性
 ヒアリングで申立人が本件放送に関する問題点として強調した点の1つは、若山氏と申立人との取扱いが公平性を欠いているということであった。すなわち、STAP研究は若山研究室で行われたもので、研究室の責任者は若山氏であり、他方、申立人は研究室の一構成員にすぎず、若山氏の指示の下で研究に従事する立場であった。それにもかかわらず、本件放送では、疑惑の原因がもっぱら申立人にあるかのような放送がされたことが問題であるという主張である。
 確かに、本件放送は、若山氏の説明に沿って作られている面があり、例えば、後述する実験ノートの扱いについても、キメラ実験を担当した若山氏の実験ノートではなく、申立人の実験ノートを取り上げるなどしており、申立人に対し不公平感を与える面があるかもしれない。
また、第2次調査報告書において、実験記録やオリジナルデータがないことや、見ただけで疑念が湧く図表があること、明らかに怪しいデータがあるのに、それを追求する実験を怠ったことなどについて、若山氏や笹井氏の責任は特に大きいとされている(別の箇所では、若山氏の責任は過失とはいえ極めて重大だともされている)。また、同報告書では申立人が若山氏の過剰な期待に応えようとして捏造を行った面も否定できないとされていることからも、客観的事実として、研究遂行過程において、若山氏と申立人との間には多かれ少なかれ上下関係があったものと思われる。
 しかし他方で、申立人は、STAP論文2本の筆頭著者であり、同論文の内容について主たる責任を負う者の1人である。また、若山氏は自ら検証を行い、自らの疑惑に対して一定の説明を試みているのに対し、申立人は、当時の状況からして斟酌すべき点はあるが、納得のいく説明を行っていないとみられていたことも事実であろう。以上のような事情を踏まえつつ、放送局の有する番組編集の自由をも考慮すれば、本件放送の全体的な構成が放送倫理上の問題があるほどに公平性を欠いているとまでは言えない。

(2) ナレーションや演出等について
@ 申立人の主張の概要
 申立人は、番組のタイトルや構成、全体のトーン(論調)や演出の仕方等の多数の点に渡って申立人らに対して断定的なトーンで実験の架空捏造を行っているかのような内容を放送したものであるとする。

A 「不正の深層」という番組タイトルについて
 まず、「不正の深層」という番組のタイトルについて、申立人が極めて悪質な実験捏造者であったとする強い印象を与えるものとなっていると主張する。
 本件放送に先立ち、2014年3月31日に公表された理研の「研究論文の疑義に関する調査委員会」の報告書では、STAP論文において申立人に捏造と改ざんの2つの研究不正があったと認定されている。また、同じく本件放送に先立つ同年7月2日には、STAP論文が撤回されている。これらの状況からすれば、こうした表現の使用が申立人に対する否定的な印象を与えることは確かであるが、論評として許されないとは言えない。

B 専門家による画像やグラフに関するナレーションや演出について
 本件放送の冒頭で、専門家とされる複数の研究者による「単純なエラーがいっぱいありますよね」「こういうのはありえないっていう感じだね」「でもうっかりしたミスではないですね」との発言を放送した上で、「専門家たちは画像やグラフの7割以上に何らかの疑義や不自然な点があると指摘した」というナレーションが行われている。これらの指摘も申立人に対する否定的な印象を与えるものであるが、これらは専門家による論評であり、人身攻撃に至るなど論評の域を逸脱しているとも言えないから、名誉毀損は成立しないし、放送倫理上の問題も認められない。ただ、個々の画像やグラフについて具体的な指摘をするのではなく(ただし、番組の途中で、グラフ1点について具体的な問題点の指摘が放送されている)、上記のような一般的かつ印象論的な発言を番組の冒頭で紹介することは、ことさらに申立人に対する否定的評価を強調するもので、不適当であるという委員の意見もあった。

C若山研究室の配置を再現したCGの放送について
 「疑惑の論文はこうして生まれた」というパートで、CDBにおける実験の状況を検証する部分があり、若山研究室の配置を再現したCGが放送され、申立人は壁で仕切られた奥まった小部屋で一人作業をしていたとするナレーションがなされた。この点について申立人は、完全に死角になる場所で、誰にも知られることのない何かをしていたというイメージを想起させるが、実際にはこの小部屋は研究室の他のメンバーも使用していたと主張する。確かに、2で詳しく述べたES細胞混入疑惑と併せて考えれば、このようなCG及びナレーションは、申立人が不正を行ったという印象を強めるものとも言える。
 しかし、この部分は結局、ES細胞混入疑惑の指摘による名誉毀損の問題に吸収されるものと捉えることができる。したがって、本決定ではこの点について独立して評価する必要はないと判断する。

(3) 実験ノートの放送について
 本件放送では、申立人の実験ノートのコピーの一部が放送され、キメラマウスの誕生や、元になった細胞をどのように作ったかの記述がないことが指摘されている。申立人は、ノートのコピーの放送について、ノートは未公表の著作物であり、著作者である申立人に無断で放送したことは著作者人格権としての公表権(著作権法第18条)を侵害すると主張している。
 この点、著作者人格権は著作権の制限事由の影響を受けないとされている(著作権法第50条)。したがって、著作物を時事の事件の報道のために利用できるとする同法第41条の規定は適用されない。しかし、このことは、著作者人格権と表現の自由との調整を不要とするものではない。ただ、この問題については専門家の間で議論されつつあるという段階であり、いまだコンセンサスが成立していないのが現状である。委員会は、その役割からいって法解釈に関して精緻な議論を行う場ではないから、こうした問題について判断をすることは必ずしも適切ではない(決定第43号「拉致被害者家族からの訴え」参照)。
 そこで、著作者人格権侵害の角度からではなく、放送倫理上の問題として検討する。そうすると、本件放送には上述の通り高い公共性があり、本件公表は、上述のように公共性と公益性のある報道目的のための相当な範囲を逸脱しているとまでは言えない。したがって、STAP細胞の作製の決定的な証拠だとみられるキメラマウスの作製実験がどのように行われたのかを検証するために実験ノートの該当部分を放送することには、放送倫理上の問題があるとは言えない。

(4) 笹井氏の自死について
 本件放送から1週間あまり経った2014年8月5日、笹井氏の自死という痛ましい出来事があった。申立人は本件放送がその引き金となったとしてNHKを批判しているが、申立人自身の人権侵害とは直接関わらないため、本決定ではこの点は取り上げない。

V 結論

以上の検討から、STAP細胞とされるES細胞は若山研究室の元留学生が作製し、申立人の研究室で使われる冷凍庫に保管されていたものであって、これを申立人が何らかの不正行為により入手し混入してSTAP細胞を作製した疑惑があるとする事実摘示については、名誉毀損の人権侵害が認められる。
 なお、本件放送が公式発表に頼らず、疑惑を検証していく調査報道であることからすると、本件放送が人権侵害に当たるという判断が報道の自由に及ぼす影響を懸念する見方もあるいは生じるかもしれない。しかし、名誉毀損の人権侵害に当たるとの判断に至った主な要因は、2.(2)で関係部分の構成として整理したDまでの場面とEとの間に連続性が認められたことにある。つまり、NHKの取材が不十分であったというよりもむしろ、場面転換のわかりやすさや場面ごとの趣旨の明確化などへの配慮を欠いたという編集上の問題が主な原因であった。このことは2.(3)c)で詳しく述べたところであるが、改めて端的に説明すれば、そのような編集の結果、一般視聴者に対して、単なるES細胞混入疑惑の指摘を超えて、元留学生作製の細胞を申立人が何らかの不正行為により入手し、これを混入してSTAP細胞を作製した疑惑があると指摘したと受け取られる内容となっている点が問題なのである。
 こうした編集上の問題を避けることがそれほど困難だったとは思われないことをも考え合わせると、本決定の結論が、今後の調査報道に対して萎縮効果を与えるという見方は適当ではない。
 次に、番組制作過程での申立人への取材方法に行き過ぎがあった点で放送倫理上の
問題も認められる。
 さらに、U.3.及び5.で指摘したように、人権侵害や放送倫理上の問題があったとまでは言えないが、科学報道番組にふさわしくない演出や、申立人に対する印象を殊更に悪化させるような箇所も見られる。
 以上で指摘した本件放送の問題点の背景には、STAP研究の公表以来、若き女性研究者として注目されたのが申立人であり、不正疑惑の浮上後も、申立人が世間の注目を集めていたという点に引きずられ、科学的な真実の追求にとどまらず、申立人を不正の犯人として追及するというような姿勢があったのではないか。
 委員会は、NHKに対し、本決定を真摯に受け止めた上で、本決定の主旨を放送するとともに、過熱した報道がなされている事例における取材・報道のあり方について局内で検討し、再発防止に努めるよう勧告する。
なお、本決定には以下の補足意見と2つの少数意見がある。

補足意見
 複数の少数意見があることに鑑み、摘示事実について委員会決定を若干補足しておきたい。
最高裁判決(最高裁2003年10月16日第一小法廷判決)が指摘し、委員会決定が採用するとおり、摘示事実がどのようなものであるかは、「一般視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準」として判断すべきであり、その判断にあたっては、「テレビジョン放送をされる報道番組においては、...視聴者は、音声及び映像により次々と提供される情報を瞬時に理解することを余儀なくされる」ことを考慮すべきである。
 テレビ番組によって提供される情報は量が多く、場面は次々に展開していく。そのため、一般視聴者は、次々と提供される情報をいずれも等しく知覚・記憶し、知識として蓄積しながら次の場面を見ていくわけではなく、番組が示す視点や強調する事項などに即して興味や関心をその都度変えながら、進行する場面を視聴すると考えられる。目の前で次々に提供される音声及び映像による情報を絶えず追い続けることから、一般視聴者は、少し前に番組がとりあげた事項については、その後の興味や関心から外れたものであれば、特に印象に残る事項以外は忘れ、あるいは意識に上らせることのない状態で、目の前に随時提供される新たな情報を見ていくことになると考えられる。
 このような、いわば動的な観点も踏まえつつ、「関係部分」の一部を簡単に振り返ってみたい。
 まず、若山氏がSTAP細胞の有無を検証している場面(関係部分のA)までの段階では、そもそも「アクロシンGFP」という用語は出てきていない。それゆえ、専門的・科学的知識を有さない一般視聴者は、この部分を視聴した段階では、「アクロシンGFP」という概念に照らして遺伝子が一致しない理由を分析的に考えることはなく、単に「本来であれば一致するはずの遺伝子が一致しなかった」という事実に着目すると考えられる(なお、委員会決定は、関係部分AからCより「若山氏の解析によれば申立人の作製したSTAP細胞はアクロシンGFPマウスから作製されたES細胞である可能性があること」を摘示事実b)として認定するものであるから、関係部分Aのみを前提とするここでの考え方とは判断の前提が異なる)。そして、一般視聴者は、遺伝子が一致しなかった理由はなぜなのか疑問を抱きながら、次の場面を視聴する。
 次の場面、すなわち理研の遠藤氏による解析結果を紹介する部分(関係部分のB)では、申立人が若山氏に渡した細胞には、「アクロシンGFP」というSTAP細胞の研究には全く必要がないはずの特殊な遺伝子が含まれていたことが示される。一般視聴者は、そのように必要がない遺伝子が含まれていたのはなぜなのか、さらに疑問を深めながら次の場面を視聴することになる。
 続く遠藤氏の解析結果を知らされた若山氏の反応とES細胞混入疑惑が提示される部分(関係部分のC)では、若山氏には「アクロシンGFPが組み込まれたマウスに心当たりがあった」ことと、「若山研究室では、アクロシンGFPが組み込まれたマウスからある細胞を作り保管していた。それは、別の万能細胞であるES細胞だった」という情報が提供される。ここでは、ナレーションの順序等から、最後に正体をあかされるES細胞が強調されており、そのことが一般視聴者の印象に残る紹介の仕方になっている。続けて、「小保方氏から受け取った細胞に、このES細胞が混入していたのではないか」というナレーションが入る。このナレーションは、表現としてはあくまでも疑問形であるが、上述した疑問を抱きながら番組を見てきた一般視聴者は、それまでに抱いてきた疑問に対し、「細胞の正体はES細胞だった可能性がある」という一定の視点ないし答えが番組により示されたと受け止めると考えられる。それまでの疑問に対して一定の答えを示されたと考えた一般視聴者の関心は、次に、それではなぜES細胞が混入したのかという疑問に移り、その疑問を抱きながら次の場面を視聴
することになると考えられる。
 ところで、「アクロシンGFP」という専門用語は、一般視聴者にとって聞き慣れない言葉である。この点、Bの場面ではナレーションとテロップの両方によってその用語が強調して示されるうえ、時をおかずにCの場面で「アクロシンGFP」という言葉が繰り返される。したがって、一般視聴者は、その用語を媒介に、遠藤氏が解析した細胞と若山氏に心当たりがあったとするES細胞との同一性を認識すると考えられる。しかし、それ以降の場面では「アクロシンGFP」という言葉は特に出てこない。また、本件放送では、ES細胞の種類として、「アクロシンGFP」を含んだものと含まないものが存在するのか否かといった説明もない。それゆえ、一般視聴者としては、その後は特に登場しない専門用語である「アクロシンGFP」を含む細胞か否かという点に特に留意することなく、ES細胞が混入したのはなぜかという点に関心を移していくと考えられる。
 その後の関係部分のEでは、若山研究室にあったES細胞が、それを作製した当人である元留学生も知らないうちに申立人の使う冷凍庫から見つかったというエピソードが示される。Dまでの場面とEの場面で触れられるES細胞については、特に「アクロシンGFP」への言及はない。しかし、いずれも「若山研究室にあったES細胞である」という点は共通しており、そのことが番組で指摘されている。さらに、委員会決定の説明するとおり、Dまでの場面とEの場面とは連続しており、そのように連続した場面でいずれもES細胞への言及がなされている。そうすると、科学的・専門的知識を有さない一般視聴者としては、番組において同一性について特段留保する説明でもなされない限りは、二つの場面で言及されたこれらのES細胞は同じものを指していると受け取るものと考えられる。
 以上検討したところから、委員会決定による摘示事実c)「STAP細胞は、若山研究室の元留学生が作製し、申立人の研究室で使われる冷凍庫に保管されていたES細胞に由来する可能性がある」というとらえ方は妥当であると考えるものである。
(二関 辰郎 委員、坂井眞 委員)
posted by Kose at 16:40| STAP

【BPO】「STAP細胞報道に対する申立て」に関する委員会決定(速報)

予算委員会の進行具合を読み違えて、予想があたらなかった。すまん。早いからご勘弁。
多くの不適切な点が上げられているが、最大の点は、ES細胞窃盗説の否定である。これはすでに石川智久偽告発不起訴やそもそも時期が関係ないという当たり前の論点から明らかなことだが、ES細胞説には大打撃であろう。表現は微妙で、全文PDFファイルで改めて確認したい。
本件放送は、STAP細胞の正体はES細胞である可能性が高いこと、また、そのES細胞は、若山研究室の元留学生が作製し、申立人の研究室で使われる冷凍庫に保管されていたものであって、これを申立人が何らかの不正行為により入手し混入してSTAP細胞を作製した疑惑があるとする事実等を摘示するものとなっている。これについては真実性・相当性が認められず、名誉毀損の人権侵害が認められる。
また、ホテルロビーでの取材が放送倫理違反だが、人権侵害と認められなかったのは信じがたい。
他方、加熱する報道競争への一般的指摘があり、NHKにとどまらない範囲に言及している点は高く評価したい。

放送人権委員会 委員会決定 2016年度 第62号
「STAP細胞報道に対する申立て」に関する委員会決定
2017年2月10日 放送局:日本放送協会(NHK)
http://www.bpo.gr.jp/?p=8946&meta_key=2016
勧告:人権侵害(補足意見、少数意見付記)
NHKは2014年7月27日、大型企画番組『NHKスペシャル』で、英科学誌ネイチャーに掲載された小保方晴子氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」を放送した。
この放送について小保方氏は、「ES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」などと訴え、委員会に申立書を提出した。
これに対しNHKは、「『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」などと反論した。
委員会は2017年2月10日に「委員会決定」を通知・公表し、「勧告」として名誉毀損の人権侵害が認められると判断した。
なお、本決定には補足意見と、2つの少数意見が付記された。

【決定の概要】

NHK(日本放送協会)は2014年7月27日、大型企画番組『NHKスペシャル』で、英科学誌ネイチャーに掲載された小保方晴子氏、若山照彦氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した特集「調査報告 STAP細胞 不正の深層」を放送した。
この放送に対し小保方氏は、「ES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」などと訴え、委員会に申立書を提出した。
これに対しNHKは、「『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」などと反論した。
委員会は、申立てを受けて審理し決定に至った。委員会決定の概要は以下の通りである。
STAP研究に関する事実関係をめぐっては見解の対立があるが、これについて委員会が立ち入った判断を行うことはできない。委員会の判断対象は本件放送による人権侵害及びこれらに係る放送倫理上の問題の有無であり、検討対象となる事実関係もこれらの判断に必要な範囲のものに限定される。
本件放送は、STAP細胞の正体はES細胞である可能性が高いこと、また、そのES細胞は、若山研究室の元留学生が作製し、申立人の研究室で使われる冷凍庫に保管されていたものであって、これを申立人が何らかの不正行為により入手し混入してSTAP細胞を作製した疑惑があるとする事実等を摘示するものとなっている。これについては真実性・相当性が認められず、名誉毀損の人権侵害が認められる。
こうした判断に至った主な原因は、本件放送には場面転換のわかりやすさや場面ごとの趣旨の明確化などへの配慮を欠いたという編集上の問題があったことである。そのような編集の結果、一般視聴者に対して、単なるES細胞混入疑惑の指摘を超えて、元留学生作製の細胞を申立人が何らかの不正行為により入手し、これを混入してSTAP細胞を作製した疑惑があると指摘したと受け取られる内容となってしまっている。
申立人と笹井芳樹氏との間の電子メールでのやりとりの放送によるプライバシー侵害の主張については、科学報道番組としての品位を欠く表現方法であったとは言えるが、メールの内容があいさつや論文作成上の一般的な助言に関するものにすぎず、秘匿性は高くないことなどから、プライバシーの侵害に当たるとか、放送倫理上問題があったとまでは言えない
本件放送が放送される直前に行われたホテルのロビーでの取材については、取材を拒否する申立人を追跡し、エスカレーターの乗り口と降り口とから挟み撃ちにするようにしたなどの行為には放送倫理上の問題があった。
その他、若山氏と申立人との間での取扱いの違いが公平性を欠くのではないか、ナレーションや演出が申立人に不正があることを殊更に強調するものとなっているのではないか、未公表の実験ノートの公表は許されないのではないか等の点については、いずれも、人権侵害または放送倫理上の問題があったとまでは言えない
本件放送の問題点の背景には、STAP研究の公表以来、若き女性研究者として注目されたのが申立人であり、不正疑惑の浮上後も、申立人が世間の注目を集めていたという点に引きずられ、科学的な真実の追求にとどまらず、申立人を不正の犯人として追及するというような姿勢があったのではないか。委員会は、NHKに対し、本決定を真摯に受け止めた上で、本決定の主旨を放送するとともに、過熱した報道がなされている事例における取材・報道のあり方について局内で検討し、再発防止に努めるよう勧告する。


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「委員会決定」における判断について
「補足意見」、「意見」、「少数意見」について
2017年2月10日 第62号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第62号

申立人
小保方 晴子 氏
被申立人
日本放送協会(NHK)
苦情の対象となった番組
『NHKスペシャル 調査報告 STAP細胞 不正の深層』
放送日時
2014年7月27日(日)午後9時〜9時49分
【本決定の構成】

I.事案の内容と経緯

1.放送の概要と申立ての経緯
2.論点
II.委員会の判断

1.委員会の判断の視点について
2.ES細胞混入疑惑に関する名誉毀損の成否について
3.申立人と笹井芳樹氏との間の電子メールでのやりとりの放送について
4.取材方法について
5.その他の放送倫理上の問題について
III.結論

IV.放送概要

V.申立人の主張と被申立人の答弁

VI.申立ての経緯および審理経過

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「補足意見」、「意見」、「少数意見」について
放送人権委員会の「委員会決定」における「補足意見」、「意見」、「少数意見」は、いずれも委員個人の名前で書かれるものであって、委員会としての判断を示すものではない。その違いは下のとおりとなっている。

補足意見:
多数意見と結論が同じで、多数意見の理由付けを補足する観点から書かれたもの
意見 :
多数意見と結論を同じくするものの、理由付けが異なるもの
少数意見:
多数意見とは結論が異なるもの
posted by Kose at 15:25| STAP