2013年02月02日

新カントリーで行こう #4 チャーリー・プール:カントリー・フォーマットの完成

チャーリー・プール(ボーカル、バンジョー:1982〜1931)は、ヴァージニアに隣接するノースカロライナの中部でアパラチアンではないとおもわれるが、バンドを組むことになる義兄弟のポージー・ローラー(Posey Rorer:フィドラー)は、ウェストバージニア出身である。ローラーおよびノーマン・ウッディーフ(ギター)とともに1917年"ノース・カロライナ・ランブラーズ"の名前で活動を始める。ニューヨークでオーディションを受け、1925年「Don't Let Your Deal Go Down Blues」をリリース。10万2千枚を売り上げる(当時南部には60万台程度しかプレーヤーがなかった)。
Charlie Poole - Don't Let Your Deal Go Down Blues (1925)


バンジョーのフィンガー・ピッキングをバンド・スタイルに組み込んだ点が受けたのだと思われる。これがブルーグラスの基本的なフォーマットになったと高く評価される点である。またコード進行が、キーGで|E(7)|A(7)|D(7)|Gmajor|というセカンダリー・ドミナントの進行を用いて演奏されている。全部リピートなのはアパラチアンダンス音楽の流れだが、過大評価すればオールドタイム・ミュージックにビートルズ的革命を起こしたと言ってよろしい。素朴すぎて、評価できないと思うが。
同時に録音された曲はそれほど奇抜でないが、バース=コーラス形式を取り、コード進行だけでバリエーションがある。かくして伝統的ダンスミュージックを離れて、カントリーないしはブルーグラスに発展する方向を作ったと言えるだろう。

Charlie Poole-I'm The Man That Rode The Mule Around The World (1925)
http://youtu.be/Ur46m2PvjiE

および
"Can I Sleep In Your Barn Tonight Mister" (1925)
http://youtu.be/g0Um8za5G14
のコードは現在でもあり得るもので、キーCとすると
|C|C|G|G|C|F|CG|C|
というものである。もう一曲は類似だがさらに凝っていて、明らかに作曲の意思が分かる。

Charlie Poole And The North Carolina Ramblers-The Girl I Left In Sunny Tennessee (1925)
http://youtu.be/wpNFAfQGBYw

|C|F|G|C|C|F|G|C|
|C|C|F|C|C|A7|G|G|
|C|C|F|C|C|CG|C|
という「長い」現代的なコード進行を持っている。セカンダリードミナントの他、アーメン終始とドミナント終始の両方を入れている。ボーカルも後世のカントリーシンガーのスタイルにつながる調子があり、単にフィドルが鳴り続けているのがオールドタイム・ミュージックの面影をとどめているだけかもしれない。

翌1926年の録音はほとんど、フィドルのポージー・ローラーが主導のダンスミュージックで、歌が入ったものもその域に戻っている。しかし次の曲はタイトルがいいのかカバーが非常に多い。たぶんブルーグラスの入門曲として親しまれているのだろう。タイトルもいいしね。
Charlie Poole Ragtime Annie (1926)
http://youtu.be/RQARym7g2rQ

次のは同年でバースがブルース進行の変形で、コーラスが大胆にアメリカ的なサブドミナントへの進行を強調した進行になっている。ほとんどロックである。歌もまるでレヴォン・ヘルムが歌っているみたいである。ほぼこれがアメリカ音楽のルーツだと言い切ってかまわないだろう。もしカントリーが単なるポップスになったらここ戻ればいいというスタイルが確立されている。

Charlie Poole - Leaving home (1926)


つぎの曲はシンプルすぎるとおもうが(ブルース12小節進行を変形している)、主題もあって、カバーも多い
Charlie Poole & The North Carolina Ramblers-White House Blues (1926)


曲は単調だがアップテンポでブルーグラスのノリがフィドルに出てきた最初の録音
Charlie Poole & The North Carolina Ramblers - Take A Drink On Me (1927)
http://youtu.be/fTcZbUnH5OU

Charlie Poole-Baltimore Fire(1929)
http://youtu.be/Y7x5AWhT2ec

タイタニック同様時事ネタを歌ったものだが、カントリーに時事ネタを歌う伝統を継承したことになる。カバーが多い。歌のパートでフィドルをやめるように洗練された。
1927年以降は人気が落ちているようだ。それもそのはず、スタイルが確立するとともにマンネリがはじまったのである。つぎもマンネリだが、これはコマーシャルになって西部劇で流れてもおかしくない田舎くささを強調しているのだ。この作られた田舎くささが「カントリー」の核であるとおもわれる。
He Rambled-Charlie Poole (1929)
http://youtu.be/Z9ihlKmaCrw

たった年間しか録音ができず、1931年に心臓発作で他界したチャーリー・プールの最後の録音の一つ。ローリング・ストーンズ級の偉大なるマンネリである。
Charlie Poole-Milwaukee Blues (1931)
http://youtu.be/Mkckcztg6P4

さて、まだブルーグラスの名人技が入っていないので、ビル・モンローとハンク・ウィリアムズの両巨頭に、プールはカントリー・ミュージックのフォーマットを確立して多大な影響を及ぼすのである。また初期のミュージシャンにもカバーされる一方、1960年代のフォークリバイバルブームで脚光を浴び、「ホワイト・ハウス・ブルース」をジョン・クーガー・メレンキャンプが、「Don’t Let the Deal Go Down」をグレートフルデッドがカバー(「Deal」として演奏)したほか、ホットツナ、ジョン・バエズ、ドク・ワトソンによるカバーがある。

冒頭の曲である。
The Grateful Dead - Deal (Rockpalast, 1981) (Don't let the deal go down)


Doc Watson - 1991 - Don't Let Your Deal Go Down


おまけ。チャーリー・プールの末裔ザ・バンドとリヴォン・ヘルムの再現!
Rag Mama Rag - The Band
posted by Kose at 20:09| カントリー