2017年01月07日

女王バチと言うより産卵バチ、余談:小保方さんの文体

ネッサ・キャリー『エピジェネティクス革命』を読んだというより一通り目を通した。400pもある。途中読まなかった章もある。もう少し知識があるなら本当に面白い本なんだと思うけど。

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トラウマについてのラットとマウスにおける海馬と副腎の間で行われるサイバネティックな安定が崩れるようにしてストレス耐性のあるなしが決まり、そこにまあ説明できないが、メチル化が関わっているというのはたいへん面白い。脳科学では、海馬と扁桃体での記憶と感情の結びつきでトラウマが説明されると思うが、確かにその程度の場合もあるだろうけれど、育児放棄された子が受けるような成長段階でのトラウマは、もっと固定的なんであろう。これによって救われるのは、トラウマは生化学的現象の基盤があり、「無意識」とか訳のわからないものを必要としないだろうと言うことである。もちろん脳で起こる電気信号やその他化学反応を人間も動物も「意識」できないのは当たり前である。この話をするとサール先生の話になるのでやめておく。

第14章はハミルトンやドーキンスで有名な真社会性昆虫、ミツバチの社会的文化についてで、これまで読んだ本の中で一番詳しかった。
子はハミルトン、ドーキンスらが主張するように姉妹ではなく、クローンである。血縁度は3/4ではなく1である。キャリーは詳しく書いてないが、女王バチは複数の雄と交尾するので、巣の中は1/2のクローンが等しく養育されているのではないかと思われる。1/2と3/4に区別はないように思われる。サルのように他の雄の子を殺してしまうというような(おそらくメスの発情の条件なんだろう)こともないだろう。
さて、幼虫は最初の3日間等しくロイヤルゼリーを与えられるが、それ以降女王バチだけがロイヤルゼリーを与えられ続ける。これが同じ遺伝子をもつ幼虫が、ほぼ変体に近い身体的変化を呼ぶのである。なので女王バチと働きバチはエピジェネティクスの結果である。これはすでに特定の遺伝子をノックアウトする手法で実験されていて、ノックアウトされる部分はメチル化されて以降発現しない遺伝子領域といえるのである。
女王バチと働きバチというのは昔の呼び名で、実のところ産卵バチと労働バチといったらいいんじゃないかと思った。女性が輝く社会なんでしょう?
であるから利他性は、餌をやる育児システムによってエピジェネティクス的に作られていると言うべきで、利己的遺伝子は、これをもって終焉したと思われる。

たいへん難しくて面白いところしかわからなかった。
次もまだ生物学ではあるが、生物学自体ではなくて「生物学の哲学」という分野だ。すでにその重鎮であるエリオット・ソーバーの『進化論の射程』は読んだのだが、それにおける統計理論の重要性をまるで理解していなかったので、もっと入門書、森元良太等『生物学の哲学入門』勁草書房、2016年8月を読もうと思う。これは図書館にあったが、ソーバーの別の2冊の翻訳、生物学の哲学の基本書『セックス・アンド・デス』は手に入らない。う〜ん、本の値段が高いので、一旦森元の本で、当分生物学は止めにしたい。


小保方さんの記事は特に刺激的でないけれど、文体は『あの日』とまったく同じなので面白い。そして料理がね、科学の代わりになっている感じがするよね。

「新鮮な金目鯛をいただいて一緒に夕食。金目鯛に包丁を入れた時の感覚で突然沸き立つように頭が冴えた。何かを呼び覚まされたような感覚。魚をさばく以外の何かの感覚に似ていたのだと思うけれど何に似ていたのか思い出せない」

「私にお菓子作りを教えてくれたマドレーヌ先生のことを思い出した。マドレーヌ先生のレッスンではハンドミキサーを使わずに手で泡立てるように教えてくださったので、私は未だにハンドミキサーを使うことができないでいる」

「ソース作りのリベンジをすることにした」

「ここ数日豆乳ヨーグルトの調子が悪かったので乳酸菌の調整からやり直した。ヨーグルトが固まると毎回地味に感動する。数日かけて数種類のロットから厳選したヨーグルトは、味、食感ともにこれまでで最高のできである」

冒頭に小保方さんの写真とされる日記の実物の写真が地味にある。『あの日』の正確な記述は日記に書かれていたものが大きいのだ、といわんばかりに。
posted by Mondayota at 18:39| 日記