2016年12月27日

T.アレン&G.コーリング『細胞』東京化学同人を読んだ

Amazonにリンク


この本は、オックスフォード大出版の新書、Very Short Introductionシリーズのひとつで、岩波書店刊の『幹細胞』と同じシリーズである。原著の出版年も2012年で同じである。たぶん山中伸弥のノーベル賞の影響じゃないだろうか。『幹細胞』が再生医療に大半が割かれているため、こちらの『細胞』の方が「幹細胞」についてより詳しい部分がある。

『幹細胞』には生体性幹細胞の記述がまるでないし、怪しい幹細胞治療についての具体的記述もないが、『細胞』にはありたいへん興味深い。

生体幹細胞は分化転換という柔軟性を示す。言い換えると、あるタイプの幹細胞が異なる条件下では別のタイプの幹細胞へと変化できる、ということである。たとえばマウスやヒトでは、胚期幹細胞、骨髄幹細胞、生体肝臓の前駆細胞が、どれも肝臓の成熟細胞を生み出すことができる。これらの変化は実験的に幹細胞に成長因子タンパクを導入したり、細胞を肝臓に移植することで確認できる。誘導された成熟細胞は肝臓内に定着して、肝機能を改善することもある。
胚には三種類の細胞層がある。外胚葉(神経系、歯のエナメル層、毛、皮膚のケラチン層など)、内胚葉(腸管、呼吸器系、膀胱など)、中胚葉(骨、筋肉、結合組織、皮膚や肝臓の内層、骨髄など)である。驚くべきことに、これらの三種類の細胞は、異なる細胞系譜の成熟細胞にも分化しうることがわかった。
幹細胞の分化転換がどの様に起こるかは、まだ明らかでない。幹細胞の運命はある程度分裂の遺伝子状態により決まるが、細胞が受け取る外部のシグナルにも依存する。もし外部のシグナルが遺伝子と異なっていると細胞は運命を変更して異なる細胞腫に分化することもある。生体幹細胞は比較的小型で構造上物特徴もないので、形態的に同定することが困難である。幹細胞のこの柔軟性は、組織中に二つまたはそれ以上の幹細胞集団があることで説明できるかもしれない。たとえば、生体幹細胞はある決まった成熟細胞だけを生じるのに対して、組織中に存在する少数の生殖幹細胞はすべての細胞を生み出せるのかもしれない。骨髄、毛包、腸管における幹細胞の自己増殖と分化細胞のバランスを説明する別のモデルでは、幹細胞が二つの異なる状態で存在するとしている。一方は休眠状態で完全な分化能を維持しており、他方は活発でで膨大な数の分化細胞を産出する。不活発な幹細胞と活発な幹細胞のバランスは、様々のシグナルタンパク質の量によって制御される。これらのタンパク質はもともとショウジョウバエで同定され、今では全ての動物細胞で必須であることが知られている。


つまり仮説としては、バカンティ氏のアイディアのようなものにコンセンサスはあるのである。まあそれを細いガラス管で取り出そうというのは、ぶっ飛んでいるのかもしれないが。ミューズ細胞もおそらくこのような生体内幹細胞の一種であろう。反対にSTAP細胞の実験ではこのような生体内幹細胞ではないことを証明する必要があって、TCR再構成実験が条件になったわけである。

小保方氏は仮説として、細胞質のなんらかの変化を考えているようなんだが、完全に特定していないのが残念である。その仮説については佐藤貴彦氏が高い評価を与えている。ぼくはミトコンドリア派なんだけどね。引用するなら別のところを引用するだろう。なぜならSTAP細胞は失敗した細胞死のようなもので、増殖能がないのは、最低の細胞質がないからだと想像することができる。あのようなばかげた事件がなければ、細胞の基礎科学として面白いと思うのだが。残念である。

ついでに岩波書店の『幹細胞』のリンクも張っておく。
Amazonにリンク
posted by Kose at 18:43| Comment(0) | STAP

【BPO】放送人権委員会定例会議事録 NスペSTAP細胞事件部分修正決定案を最終確認へ!1月定例会後勧告確定か?

放送人権委員会 議事概要 第242回
第242回 – 2016年12月
http://www.bpo.gr.jp/?p=8899&meta_key=2016
STAP細胞報道事案および事件報道に対する地方公務員からの申立て事案の「委員会決定」案をそれぞれ議論、また都知事関連報道事案、浜名湖切断遺体事件報道を審理した。世田谷一家殺害事件特番事案について、テレビ朝日から提出された対応報告を了承した。

議事の詳細
日時
2016年12月20日(火)午後4時〜9時35分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
1.STAP細胞報道事案の審理
2.事件報道に対する地方公務員からの申立て(テレビ熊本)事案の審理
3.事件報道に対する地方公務員からの申立て(熊本県民テレビ)事案の審理
4.都知事関連報道事案の審理
5.浜名湖切断遺体事件報道に対する申立て
6.世田谷一家殺害事件特番事案の対応報告
7.その他
出席者
坂井委員長、奥委員長代行、市川委員長代行、紙谷委員、城戸委員、
白波瀬委員、曽我部委員、中島委員、二関委員

1.「STAP細胞報道に対する申立て」事案の審理

対象となったのは、NHKが2014年7月27日に『NHKスペシャル』で放送した特集「調査報告STAP細胞 不正の深層」。番組では英科学誌「ネイチャー」に掲載された小保方晴子氏らによるSTAP細胞に関する論文を検証した。
この放送に対し小保方氏は人権侵害等を訴える申立書を委員会に提出、その中で「何らの客観的証拠もないままに、申立人が理研(理化学研究所)内の若山(照彦)研究室にあったES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」などとして、NHKに公式謝罪や検証作業の公表、再発防止体制づくりを求めた。
これに対しNHKは答弁書で、「今回の番組は、世界的な関心を集めていた『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、2000ページ近くにおよぶ資料や100人を超える研究者、関係者の取材に基づき、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」などと主張した。
今回の委員会では、11月30日に行われた第4回起草委員会での議論を経て提出された「委員会決定」案を事務局が読み上げ、それに対して各委員が意見を出した。委員会で指摘された修正部分を反映した決定案を次回委員会に提出、最終的に確認する運びとなった。
posted by Kose at 11:29| STAP